クィア/QUEER
Queer
ストーリー
結末まで書いています。
1950年代メキシコシティの米国人が年下の男に執着する。アヤワスカと渇望と、崩れるダニエル・クレイグ。
1950年ごろのメキシコシティ。麻薬の罪から逃れて故国を離れ、家の仕送りで暮らすアメリカ人ウィリアム・リーは、国外から来た者たちの集まるバーで酒を飲み、薬を使い、若い男を誘って日々を過ごしている。ある晩、彼は元兵士の青年ユージーン・アラートンを見かけ、心を奪われる。店から店へと追いかけ、友人となり、やがて床をともにするが、アラートンは距離を崩さない。女性と一緒にいる姿もよく見かけられ、自分はリーのような意味でのクィアではないと言う。
リーは、飲めば人の心が読めるようになるという密林の植物ヤーヘの話を知り、南米へ一緒に探しに行こうとアラートンを誘う。アラートンは渋りながらも応じる。旅の途中、リーは禁断症状に襲われ、その震えを鎮められるのはアラートンだけだ。ふたりは体を重ねるが、そのあと青年はいっそう遠ざかっていく。キト近郊の密林で、ふたりはアメリカ人の植物学者コッター医師を訪ね当てる。はじめはリーを疑っていた彼女も、彼が本当に求めているのはアラートンの心に入りこむ道だと見てとり、薬を煎じてやる。幻覚の中で、ふたりは心臓を吐き出し、言葉なしに通じ合い、ひとつの体に溶け合う。アラートンは、自分はクィアではなく、肉体を持たないのだと言う。もっと留まるよう勧められても、動揺したアラートンは帰りたがり、帰路でふたりは別れる。
2年後、メキシコシティに戻ったリーは、アラートンが陸軍の大佐の案内役として南米へ発ったきり消息を絶ったと聞かされる。夢の中で、リーは隣のホテルの部屋に彼を見つける。アラートンは頭にグラスを載せ、撃ってみろと誘う。リーの弾は彼の額を撃ち抜き、リーは消えていく亡骸を抱きしめ、やがて自分も消える。最後の場面で、年老いたリーはホテルのベッドにひとり横たわり、震えている。まだ若いままのアラートンが隣に身を横たえ、彼を落ち着かせる。
主な出演
ダニエル・クレイグウィリアム・リー役
1950年代のメキシコシティに流れてきたアメリカ人。作者バロウズの分身で、年下の青年に絶望的に恋をする。
ウィリアム・リーの物語
リーは家の仕送りでメキシコシティに暮らし、バーで若い男を拾って日々を過ごしていたが、ユージーン・アラートンをひと目見て心を奪われる。店から店へと追いかけて友人になり、床もともにするが、アラートンが距離を崩さないたびに苦しむ。人の心が読めるという植物ヤーヘを探しに南米へ誘うのは、彼の心に入りこみたいからだ。旅の途中、禁断症状の震えを鎮められるのはアラートンだけだった。密林で薬を飲んだふたりはひとつの体に溶け合い、自分はクィアではなく肉体を持たないのだとアラートンは言う。ふたりは別れる。2年後、彼が消息を絶ったと聞いたリーは、夢の中で彼を撃つ。最後に、年老いてひとり震えるリーの隣に、若いままのアラートンが身を横たえる。
ドリュー・スターキーユージーン・アラートン役
メキシコシティで暮らす元兵士の青年。リーの好意を受け入れながら、心の内は決して見せない。
ユージーン・アラートンの物語
元兵士の青年アラートンは、リーに追いかけられ、酒をおごられ、金を出してもらい、床もともにするが、自分をクィアとは呼ばず、女性と一緒にいる姿もよく見かけられる。ヤーヘを探す南米行きには渋りながら応じ、旅の途中、禁断症状に苦しむリーの震えを鎮められるのは彼だけだが、体を重ねたあとは、いっそう遠ざかる。密林で薬を飲むと、自分はクィアではなく肉体を持たないのだと告げ、動揺してコッター医師の引き留めを断り、帰り道でリーと別れる。2年後、陸軍の大佐に付いて南米へ発ったきり消息を絶ったと、ジョーがリーに伝える。リーの夢の中で、彼は頭にグラスを載せて撃たれる。最後に、若いままの彼が年老いたリーの隣に横たわり、その震えを鎮める。
ジェイソン・シュワルツマンジョー・ギドリー役
バー仲間のリーの友人。旅から戻ったリーに、アラートンの消息を伝える。
レスリー・マンヴィルコッター医師役
エクアドルの密林の奥に住むアメリカ人の植物学者。ふたりのためにヤーヘを煎じる。
この作品が問いかけるもの
相手のすべてを知りたい男と、決して知られたくない青年の物語だ。ウィリアム・バロウズはメキシコシティでの自らの日々をもとに1951年から53年にかけてこの小説を書いたが、刊行は1985年まで待たされ、物語も未完のままだった。映画はそこに結末を与えた。描かれるのは、報われない欲望、限られたバーの中でしか自分でいられない同性愛者の孤独、そして依存というもうひとつの渇きだ。リーがアラートンを撃つ夢は、1951年にメキシコシティでバロウズが妻ジョーン・ヴォルマーを撃ち殺した事件を思い起こさせる。彼は当初、酔ってウィリアム・テルのまねをしたのだと語っていた。ダニエル・クレイグはこの役でナショナル・ボード・オブ・レビューの主演男優賞を受け、映画はトルコで上映禁止となった。残るのは、他人の心の中に住みたいと願う痛みだ。