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Cinema 月明かりの映画館

ノーリミット:果てなき深淵

No Limit

2022映画フランス

465作品の星図のなかで見る

ストーリー

結末まで書いています。

フリーダイビングの王者と、彼が寝て危険に晒す生徒。オードリー・メストレの実話に緩く基づく。

ロクサーナは子どものころ、祖父に潜ることを教わった。学生の彼女は、南フランスで開かれるフリーダイビング講習に申し込む。講師はパスカル・ゴーティエ。この競技のなかでもっとも過酷で議論の多い「ノーリミット」の世界王者だ。人を惹きつけ、女性には軽薄なパスカルは、ほどなく彼女の師であり恋人になる。

その世界の危うさを、彼女はすぐに知る。練習中にチームの若い仲間が命を落とし、ダイバーのステファンは、深く潜らせたパスカルを責める。ロクサーナは亡くなった仲間に代わって安全要員に加わり、パスカルは172メートルの世界記録を打ち立てる。高揚した彼女は、学業をやめて彼についていくと母に告げる。記録はすぐにライバルに破られ、さらに深く挑んだパスカルは意識を失って、医師から潜水を禁じられる。彼は自分の野心をロクサーナに向ける。フランス女子記録を出した彼女は、報道が追いかける存在になる。パスカルは誇らしく思いながら、それに耐えられない。チームの反対を押しきって、彼はロクサーナにノーリミットの180メートル記録に挑ませると決める。彼女が訓練を重ねるあいだに彼は浮気をし、ロクサーナは安全要員のトムに心を寄せる。別れようとすると、パスカルは拳で鏡を叩き割り、彼女はとどまってしまう。やがて彼は、トムとのことを知る。

挑戦の日、トムは彼女の装備を点検したあと、海底でリフトバッグをふくらませて彼女を引き上げるはずの空気タンクに、パスカルが触れているのを目にする。潜る直前、パスカルはロクサーナに口づける。180メートルの海底で、タンクは空だった。トムはどうにかバッグを動かすが間に合わず、水面に上がったとき彼女はすでに息絶えていた。警察の聴取に、チームの誰も何が起きたのかを語らない。空港へ向かうトムを、パスカルが遠くから見つめている。祖父は孫娘の遺灰を海にまく。映画は、2002年に記録挑戦中に亡くなったフランスのダイバー、オードリー・メストレへの献辞で幕を閉じる。

主な出演

  • カミーユ・ロウロクサーナ役

    子どものころ祖父と潜っていた学生。競技としてのフリーダイビングと、師との抜け出せない関係に引きこまれていく。

    ロクサーナの物語

    ロクサーナの父は、彼女が12歳のとき自ら命を絶った。のちに彼女自身も命を絶とうとし、救ったのは、潜ることを教えた祖父だった。海洋生物学を学ぶ彼女は、パスカル・ゴーティエの講習に申しこみ、彼の恋人になる。チームの若い仲間が命を落とすと代わりに安全要員を務め、母の反対を押しきって学業をやめ、彼についていく。潜水を禁じられた彼に導かれてフランス女子記録を出すが、彼女に集まる注目に彼は耐えられない。浮気をされてトムに心を寄せ、別れようとするが、拳で鏡を割る彼を前にとどまる。180メートルの海底で、彼女を引き上げるはずのタンクは空だった。水面に上がったとき彼女はもう息絶えていて、祖父がその遺灰を海にまく。

  • ソフィアン・ザマニパスカル役

    ノーリミットの世界王者。人を惹きつけ、独占欲が強く、誰かに、とりわけロクサーナに追い越されることに耐えられない。

    パスカルの物語

    ロクサーナが申しこんだ講習の講師がパスカル・ゴーティエで、彼女はほどなく彼の恋人となり、チームに加わる。彼は172メートルの世界記録を打ち立てるが、数日で破られ、さらに深く挑んで意識を失い、医師に潜水を禁じられる。野心はロクサーナに向かい、彼女が自分より注目を集めると、それに耐えられない。チームの反対を押しきって180メートルに挑ませ、訓練のあいだに浮気をし、別れを切り出されると拳で鏡を割り、トムとのことをメッセージから知る。挑戦の日、彼女を引き上げるはずの空気タンクに触れているところを見られ、潜る直前に彼女に口づける。タンクは空だった。警察には何も語らず、空港へ向かうトムを遠くから見つめる。

  • セザール・ドンボワトム役

    パスカルのチームの安全要員。ロクサーナに惹かれ、記録挑戦の日に彼女の装備を点検する。

    トムの物語

    トムはパスカルの講習で教えるダイバーのひとりで、ロクサーナとは初日から通いあうものがあったが、彼女はパスカルを選ぶ。チームでは安全要員を務める。パスカルの浮気を知ったロクサーナに頼られてふたりは親しくなり、パスカルはメッセージからそれを知る。記録挑戦の朝、いろいろあったがきみを頼りにしている、とパスカルに言われる。彼女の装備を点検したあと、空気タンクに近づくパスカルを見て、もう点検は済んでいると告げる。180メートルでタンクは空だった。トムはどうにかリフトバッグを動かすが、間に合わない。警察の聴取では見たことを語らず、空港へ向かう彼を、パスカルが遠くから見つめている。

  • ローラン・フェルナンデスステファン役

    チームのダイバー。若い仲間の死をパスカルの責任だと考え、ロクサーナを危険にさらすことに反対する。

この作品が問いかけるもの

『ノーリミット: 果てなき深淵』は、恋の物語を、支配がじわじわ締まっていく過程として語る。師であり恋人でもある男は、若い女性の才能を誇りに思うが、それが自分を追い越すと、彼女がどこへ、どこまで深く行くのかを決めはじめる。物語は実際の死の輪郭を借りている。2002年、記録挑戦中に溺死したオードリー・メストレだ。潜水を取り仕切った夫のピピン・フェレラスは、安全管理をめぐって激しい批判を受けてきた。映画は虚構だと断りながら、最後に彼女への献辞を掲げる。フェレラスは殺人の濡れ衣を着せられたとしてネットフリックスを訴えたが、2024年、裁判官は訴えを退けた。パスカルを彼と見る観客はいないとする一方、パスカルの罪に曖昧さはないとも述べた。命綱を握るのが離れられない相手のとき、女性はどこまで行けるのか。その問いが残る。