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Cinema 月明かりの映画館

ただならない物語

Ajeeb Daastaans

2021映画インド

465作品の星図のなかで見る

ストーリー

結末まで書いています。

4つの奇妙な物語。ダリットの工場労働者と上位カーストの同僚を描くニーラジ・ガイワン編が語り継がれる。

四人の監督による、ただならない四つの短編。

シャシャンク・カイタン監督編。リパクシ(ファーティマー・サナー・シャイフ)は、恐れられる地主バブルー(ジャイディープ・アロワット)と愛のない結婚生活を送っている。夫は彼女に触れもしないが、ほかの男に目を向けることも許さない。リパクシは、ロンドンでの職を断ってバブルーのもとで働き始めた運転手の息子ラージ(アルマーン・ラルハン)に惹かれ、駆け落ちを計画する。同性愛を隠してきたバブルーも、ラージに愛を打ち明ける。だがラージは、車の傷をめぐってバブルーに父の脚を折られた日から復讐を誓っていた。彼はふたりを裏切って国を出る。駅でひとり待つリパクシを見つけたのはバブルーだった。身ごもった彼女を彼は傷つけず、同じ男を愛し、同じ男に裏切られたふたりが残される。

ラージ・メータ監督編。スラムで幼い妹ビニー(イナーヤト・ヴァルマ)を育てる家政婦ミーナル(ナウシュラット・バルーチャ)は、自宅の電気を止めた住宅組合の役員ヴィノードの家で働き始める。ヴィノードは彼女の体に手を伸ばし、電気を戻したければ体を差し出せとほのめかす。ビニーはそれを見ていた。赤ん坊の誕生祝いの夜、酔ったミーナルの恋人スシル(アビシェーク・バナルジー)が電気を落とし、赤ん坊が遺体で見つかる。警察でミーナルは、子どものいない元の雇い主を名指しする。だがビニーのかばんから赤ん坊のおもちゃが見つかり、少女は言う。あの子はただのおもちゃだった、と。

ニーラジ・ガイワン監督編。商学の学位を持つダリットの工場労働者バールティ(コーンコナー・セーン・シャルマー)は、望んでいた事務職を、バラモンの新入社員プリヤ(アディティ・ラーオ・ハイダリー)に奪われる。ふたりは惹かれ合うが、既婚で本心を隠すプリヤは、バールティが自分のカーストを明かすと身を引く。プリヤの誕生祝いの席に、バールティはケーキを切り分ける係としてだけ呼ばれる。バールティは、母になれば心も落ち着くとプリヤを説き伏せ、彼女の仕事を覚え、姑に意見を求められると、家にいるべきだと答える。事務職はバールティのものになる。

カヨーズ・イラニ監督編。ナターシャ(シェファリ・シャー)は、聴力を失いつつある娘のために手話を学ぶ。夫は忙しさを理由に学ぼうとしない。彼女は耳の聞こえない写真家カビール(マナヴ・コウル)に惹かれ、一夜をともにする。翌朝帰宅すると、夫が娘と手話で笑い合っていた。後を追ってきたカビールの前で、彼女は泣きながら扉を閉める。

主な出演

  • ファーティマー・サナー・シャイフリパクシ役

    恐れられる地主と愛のない結婚をした妻。運転手の息子に恋をし、駆け落ちを計画する。

    リパクシの物語

    バブルーはリパクシと結婚しながら、ほかに愛する人がいるから君と寝ることはないと告げた。三年後、彼女は屋敷に出入りする男たちに気のあるそぶりを見せる。近づいた男が夫にどんな目に遭わされるか知りながら。そこへ、ロンドンでの職を断ってバブルーに雇われた運転手の息子ラージが現れ、リパクシは結婚が壊れかけていると打ち明ける。ふたりは恋に落ち、駆け落ちを計画する。だがバブルーもまたラージを愛しており、ラージは、車の傷をめぐって父の脚を折られた日の復讐のために来ていた。ラージはふたりを裏切って国を出る。駅でひとり待つリパクシを見つけたバブルーは銃を向けるが、彼女は身ごもっており、手を下さない。同じ男を愛し、同じ男に裏切られたふたりが残される。

  • ジャイディープ・アロワットバブルー役

    リパクシの夫。家名を守る暴力的な男で、同性愛を隠し、妻と同じ青年に恋をする。

  • ナウシュラット・バルーチャミーナル役

    幼い妹をひとりで育てる機転の利く家政婦。自宅の電気を止めた男の家で働き始める。

    ミーナルの物語

    妹ビニーと暮らす部屋の明かりを、ミーナルは違法に引いた電線でともしていた。それを、彼女が働く住宅地の組合の新しい役員ヴィノードに切られる。電気を取り戻すため、彼女はヴィノードの家で働きはじめる。明かりが戻るなら、いやらしい目で見られるくらい我慢できると言って。だが赤ん坊が生まれたあと、ヴィノードに体を触られ、ミーナルは泣きながら家を出る。赤ん坊の誕生祝いの夜、酔った恋人スシルが電気を落とし、赤ん坊が遺体で見つかる。警察では何も知らないと言い張り、やがて子どものいない元の雇い主を名指しする。だがビニーのかばんから、赤ん坊のおもちゃが見つかる。少女は言う。あの子はただのおもちゃだった、と。

  • コーンコナー・セーン・シャルマーバールティ・マンダル役

    学歴がありながら顧みられないダリットの工場労働者。バラモンの同僚に恋をし、やがて出し抜く。

    バールティ・マンダルの物語

    バールティは工場の現場でただひとりの女性だ。空きはないと言われた事務職は、新入りのプリヤに渡る。決め手は手相占いだったと、のちにプリヤから聞かされる。名字を尋ねられ、偽りの名字を名乗る。ふたりは親しくなり、惹かれ合う。だがダリットだと打ち明けると、プリヤは身を引く。プリヤの誕生祝いには、ケーキを切り分ける係としてだけ呼ばれ、あとで更衣室でひとり泣く。やがてプリヤに子どもを持つよう説き伏せ、産休中の代役を務めて仕事を覚える。プリヤの家で出された茶は、家族の磁器とは別の金属の器に注がれていた。姑に意見を求められ、プリヤは家で子どもを育てるべきだと答える。事務職は彼女のものになる。彼女はその器で茶を飲み、プリヤを見据える。

  • アディティ・ラーオ・ハイダリープリヤ・シャルマ役

    工場の事務職に就いたバラモンの嫁。バールティに惹かれながら、結婚からもカーストからも踏み出せない。

  • シェファリ・シャーナターシャ役

    娘のために手話を学ぶ母親。結婚生活の孤独のなか、耳の聞こえない写真家に惹かれていく。

    ナターシャの物語

    十代の娘には手話が必要になったが、夫は忙しいと言って学ぼうとせず、夫婦の言い争いは激しくなるばかりだ。写真展で、ナターシャは耳の聞こえない写真家カビールと出会い、ふたりは手話で語り合う。友情はやがて恋に変わる。ある夜、彼の部屋でためらった彼女は外へ飛び出すが、階段に座り込んだところへ、今夜は帰らないという夫からの連絡が届く。彼女は部屋に戻り、朝まで過ごす。翌朝、カビールは鏡の前で求婚の言葉を練習するが、本人を前にすると切り出せない。家に帰ったナターシャは、夫と娘が一緒に笑い合っているのを目にする。後を追ってきたカビールに、その目で嘘をついたのかと責められると、彼女は冷たく帰ってと告げ、泣きながら扉を閉める。

この作品が問いかけるもの

四つの物語は、インドで欲望のかたちを決める序列、階級やカースト、性的指向、障害のなかに欲望を通してみせる。同性愛を隠す夫と顧みられない妻は、同じ男を求めていたと知る。家政婦の体は電気の代償にされ、物語は子どもの手による暴力で終わる。批評家が高く評価したニーラジ・ガイワン監督の一編は、ふたりの女性の恋をカーストの物語へと変える。ダリットの女性は、バラモンの恋人が越えない一線を優しさでは越えられないと知り、周囲の偏見を這い上がる道具に変える。最後の物語は、娘に必要になった手話を誰が学ぼうとするかで、ひとつの結婚を測る。コーンコナー・セーン・シャルマーは、配信作品を対象とする2021年のフィルムフェア賞で主演女優賞を受けた。後に残るのは、奇妙さの多くが、誰が誰を求めてよいとされているかに宿るという感覚だ。