きみはペット
Kimi wa Pet
ストーリー
結末まで書いています。
エリート女性が年下の青年を“ペット”として飼う。恋愛のルールを外した世話のファンタジー。
巌谷スミレは28歳。東大出身の新聞記者で、あまりに生真面目で有能なため、社内では敬遠されている。恋人と別れた直後、部長に腹を立てて思わず殴ってしまったその帰り道、スミレはマンションの前で段ボール箱の中に眠る青年を見つけ、家に連れて帰る。しばらく置いてほしいと頼む彼に、昔飼っていた犬の面影を重ねたスミレは、冗談半分で「ペットとしてなら」と条件を出し、青年はあっさり承諾する。スミレは彼をモモと名づける。本名は合田武志、20歳の才能あるダンサーだった。モモは、誰もくれなかったものをスミレにくれる。明るい「おかえり」と、見返りを求めないぬくもりと、弱さを見せられる相手を。
そんなとき、ずっと憧れていた先輩記者・蓮實滋人から食事に誘われる。スミレはモモの存在を隠し、ペットは犬だと言いつくろい、蓮實が会いたいと言えばミニチュアダックスフントまで借りてくる。蓮實を慕う派遣社員の福島紫織からは、正面切って挑まれる。モモはやきもちを焼き、社員旅行の先で蓮實とスミレのキスを見て、黙って立ち去る。幼なじみのユリは、恋人がいながら男をペットとして飼い続けるスミレを責める。やがてモモの母がモモのドイツ行きを決め、蓮實はスミレに結婚を申し込む。
モモの最後の夜、スミレは思わず行かないでと言ってしまい、ふたりは一夜をともにする。翌朝、気まずさから家を出たスミレは、モモを拾ったマンションの前で、笑顔で別れを告げる。スミレは蓮實に本当のことを打ち明けるが、蓮實は嘘を許せず、ふたりは良い先輩と後輩に戻ろうと握手をして別れる。空港で、スミレが相談していたカウンセラーに偶然声をかけられたモモは、心を決めてスミレのもとへ走り出すが、途中でバイクにはねられる。数日後、空っぽの部屋がつらくて温泉に出かけようとしていたスミレの家のチャイムが鳴る。ドアの前には、腕をけがしたモモが立っていて、またお風呂に入れてくれる?と言う。おかえり、とスミレは迎え、もうこの手を離さないと心に決める。
主な出演
小雪巌谷スミレ役
優秀だが不器用な新聞記者。周りから一目置かれながら孤独で、拾った青年をペットとして飼い始める。
巌谷スミレの物語
スミレは恋人に振られたその日に部長を殴ってしまい、帰り道、マンションの前の段ボール箱で傷だらけで眠る青年を見つける。看病した彼を、冗談半分にペットとして住まわせ、昔飼っていた犬の名からモモと呼ぶ。長く憧れてきた先輩の蓮實に誘われると、モモの存在を隠し、ペットは犬だと言いつくろって、ミニチュアダックスフントまで借りてくる。モモのドイツ行きを知り、モモが自分のそばにいた理由と、自分がモモをそばに置いた理由が同じだと気づく。最後の夜、行かないでと言ってしまい、ふたりは一夜をともにする。翌朝、幼なじみのユリのもとへ逃げ出す。蓮實に本当のことを話すが、彼は嘘を許せない。数日後、ドアの前に立つモモを、スミレはおかえりと迎える。
松本潤合田武志(モモ)役
段ボール箱の中で見つかった天真爛漫な若いダンサー。スミレのペットとして暮らし、かけがえのない存在になる。
合田武志(モモ)の物語
モモは毎晩スミレを明るく出迎え、公演を見に来てとねだり、職場でのみじめな仕事にめげるスミレを元気づける。蓮實がスミレに近づくと、やきもちを焼いてわざと素っ気なくし、蓮實が泊まる夜はロフトに隠れて彼女をからかう。スミレの社員旅行の夜、蓮實とスミレのキスを見て、黙って立ち去る。やがてドイツ留学を決める。最後の夜、行かないでと言われて一夜をともにするが、目覚めるとスミレはいない。彼女に拾われた場所で笑って別れを告げ、泣きたいときは誰かのそばで泣けよと言う。空港で浅野に声をかけられて引き返し、スミレのもとへ走る途中でバイクにはねられる。数日後、腕をけがした彼はスミレの部屋のチャイムを鳴らし、またお風呂に入れてくれる?と尋ねる。
田辺誠一蓮實滋人役
外報部の先輩記者で、スミレが長く憧れてきた男性。やがてスミレに結婚を申し込む。
鈴木紗理奈白妙ユリ役
スミレの幼なじみで既婚者。スミレが目をそらしていることを、はっきり言ってくれる。
酒井若菜福島紫織役
新聞社の若い派遣社員。蓮實を狙い、スミレに正面から張り合う。
長塚京三浅野哲史役
新聞社のカウンセラー。スミレの相談相手で、空港でかけた言葉がモモを彼女のもとへ向かわせる。
この作品が問いかけるもの
『きみはペット』は、力関係をめぐる空想を、ケアをめぐる問いに変えてみせる。スミレは何もかも正しくこなしてきた。一流の大学、堅い新聞社、ふさわしい恋人。行き着いたのは、一目置かれ、敬遠され、ひとりでいる毎日だった。この物語の皮肉は、彼女が柔らかくなれる唯一の関係が、形式の上では彼女が主人である関係だということだ。年下の男をペットとして飼うことは、年齢と経済力と性別のいつもの配置を逆さにする。作品はそのばかばかしさを承知したうえで、彼女がそれを求める理由も知っている。帰れば喜んでくれて、肩書きを求めない存在。まっとうな求婚者は確かな未来を差し出すが、彼女の嘘を許せない。結末は、名前のある関係ではなく名前のない関係を選び、それに名前が要るのかどうかを開いたまま残す。2017年には別の配役でリメイクされた。