ラスト・フレンズ
Last Friends
ストーリー
結末まで書いています。
DV、性別違和、シェアハウスで選ぶ家族。2000年代の記念碑的ドラマ。
22歳の藍田美知留は、東京の美容室でアシスタントとして働いている。職場では先輩にいじめられ、家では男を連れ込む母に顧みられない。恋人の及川宗佑は区役所の児童福祉課に勤める優しげな青年で、美知留に一緒に暮らそうと言う。同じころ美知留は、高校時代の親友・岸本瑠可と再会する。瑠可は全日本選手権の優勝をめざすモトクロスの選手で、客室乗務員のエリとシェアハウスで暮らしていた。そこへ、心優しいヘアメイクアーティストのタケルも越してくる。
宗佑と暮らし始めた美知留は、監視され、束縛され、暴力を受けるようになる。瑠可とタケルは彼女をシェアハウスにかくまうが、宗佑に言いくるめられて戻った美知留への暴力はさらにひどくなり、タケルがもう一度彼女を連れ出す。住人たちもそれぞれの秘密を抱えている。瑠可は、作中の言葉で言えば性同一性障害に悩み、誰にも打ち明けられず、美知留を愛している。子どものころ義理の姉から性的虐待を受けたタケルは、女性に触れられることに耐えられず、瑠可に恋をしている。永遠の愛を信じないエリは、妻のいる先輩の友彦と関係を続けていて、夫婦仲の壊れた友彦もシェアハウスにやってくる。美知留はタケルを頼るようになり、宗佑と別れるために、ほかに好きな人ができたと告げる。宗佑はタケルに暴力をふるい、タケルは大事な仕事を失う。タケルは瑠可に想いを告げるが、瑠可は答えられず、やがて週刊誌に瑠可の秘密が報じられる。
瑠可の気持ちを知った美知留は、母のアパートに戻る。別れ話を口実に呼び出した宗佑は、美知留をレイプする。友人たちを守るため、もう二人を傷つけないなら戻ると美知留が告げると、宗佑は自ら命を絶つ。美知留は、かつて暮らした港町・銚子で自らも命を絶とうとするが、母の古い知り合いに偶然見つけられ、その旅館で働き始める。やがて宗佑の子を妊娠していることがわかる。高血圧のため母子ともに危険があると告げられながら、大事な人の子どもだからと、美知留は産むことを決める。
瑠可は選手権で優勝する。タケルに背中を押された瑠可は、ふたりで美知留を探しに行き、難産の末に女の子が生まれる場に立ち会う。美知留は瑠可とタケル、そして自分の名前から、娘を瑠美と名づける。エリは妻と別れた友彦のプロポーズを受けて結婚する。美知留は瑠可、タケルとともにシェアハウスに戻り、自分たちで選んだ家族として瑠美を育てていく。
主な出演
長澤まさみ藍田美知留役
人を信じやすく流されやすい美容室のアシスタント。居場所がなく、恋人から束縛と暴力を受ける。
藍田美知留の物語
美知留は、一緒に暮らそうという宗佑の誘いに応じる。度重なる暴力に耐えかねて瑠可を頼り、シェアハウスに身を寄せるが、宗佑に言いくるめられて戻り、暴力はさらにひどくなる。ふたたびタケルに連れ出され、宗佑と別れるために、ほかに好きな人ができたと告げる。宗佑はタケルに暴力をふるい、タケルは大事な仕事を失う。瑠可の想いを知って戸惑い、母のアパートに戻ると、別れ話を口実に呼び出され、宗佑にレイプされる。友人たちを守るため、もうふたりを傷つけないなら戻ると告げるが、宗佑は自ら命を絶つ。自分も命を絶とうと向かった銚子で母の知人に拾われ、妊娠を知る。危険を告げられながら娘を産み、瑠美と名づけて、瑠可、タケルとシェアハウスに戻る。
上野樹里岸本瑠可役
美知留の高校時代の親友で、才能あるモトクロス選手。性別をめぐる悩みを誰にも言えず、美知留を愛している。
岸本瑠可の物語
瑠可はモトクロスの選手で、見た目や性別ではなく、ひとりのレーサーとして評価されたいと願い、作中の言葉で言えば性同一性障害という悩みを誰にも打ち明けられずにいる。宗佑に殴られた美知留をシェアハウスにかくまうが、彼女は宗佑のもとへ戻っていく。いちばん信頼するタケルに打ち明けようとした矢先、先に彼から愛を告白され、幻滅されるのを恐れてごまかす。シェアハウスを出ようと決め、悩みを手紙でタケルに打ち明けると、タケルは受け止め、瑠可を連れ戻す。やがて週刊誌に秘密を報じられる。最終回、全日本選手権で優勝を果たし、タケルとともに銚子まで美知留を探しに行き、娘の誕生に立ち会う。そして三人でシェアハウスに戻り、その子を一緒に育てていく。
瑛太水島タケル役
心優しいヘアメイクアーティスト。子どものころの虐待から人に触れられることを恐れ、瑠可に恋をする。
水島タケルの物語
タケルは昼はヘアメイク、夜はバーで働き、いつも自分を後回しにする。シェアハウスに越してきたのは、贈り物を送りつけ、しつこく電話をかけてくる10歳年上の義理の姉・優子から離れるためでもあった。子どものころ、彼はこの姉から性的虐待を受けていた。美知留を宗佑のもとから連れ出し、そのために宗佑に殴られて大事な仕事を失う。瑠可が美知留を愛していると知りながら瑠可に恋をし、想いを告げて断られても、大切に思い続ける。シェアハウスを出ようとする瑠可の手紙を受け止め、引き止める。最終回、美知留を案じる瑠可のために銚子まで探しに行こうと言い出し、最後まで瑠可を支えると心に決める。そして美知留、瑠可、生まれた子とともにシェアハウスに戻る。
錦戸亮及川宗佑役
美知留の恋人で児童福祉課の職員。幼いころ母に捨てられ、愛する女性を束縛し、つきまとい、暴力をふるう。
水川あさみ滝川エリ役
シェアハウスに住む明るい客室乗務員。永遠の愛を信じず、妻のいる男性と関係を続けている。
山崎樹範小倉友彦役
エリの会社の先輩で既婚者。流されやすく煮え切らず、夫婦仲が壊れてシェアハウスにやってくる。
この作品が問いかけるもの
『ラスト・フレンズ』は、当時ようやく社会の目に見え始めていた問題を、夜のゴールデンタイムに正面から描いた。ドメスティック・バイオレンス、性別をめぐる違和、子どものころの性的虐待に根ざした触れ合いへの恐れ。いちばん深く残るのは宗佑の姿だ。職場で慕われ、人前では優しい男が、愛していると言う女性を監視し、孤立させ、殴り、彼女の友人への思いまで脅しの道具にする。作品は、彼女がなぜ何度も彼のもとへ戻ってしまうのかも、同じようにはっきりと描く。ドラマアカデミー賞では作品賞をはじめ6つの賞を受けた。結末は、この作品でいちばん難しい問いだ。自分を殴り、レイプした男の子どもを、それぞれ深く傷ついた人たちが、自分たちで選んだ家族として育てていく。作品はそれを希望として差し出し、希望だけで足りるのかという問いを開いたまま残す。