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Cinema 月明かりの映画館

瓜を破る〜一線を越えた、その先には

Ripe for the Picking

2024ドラマ・シリーズ日本

465作品の星図のなかで見る

Moonlightの読みもの

Cinema『瓜を破る』がやさしく壊す、「普通」の恋愛という思い込みこの一篇を読む

ストーリー

結末まで書いています。

32歳・処女の会社員が自分を変えようと動き出す。30代処女、事実婚、ルッキズム、ノンセクシャルの群像。

ごく普通の会社員・香坂まい子は32歳。これまで一度も性体験がない。ほかの誰もがとうに越えた一線のように思えてならない。気難しい上司・味園美由紀も「高齢処女」らしいといううわさに共感していたまい子は、その美由紀にも同棲中の恋人がいると知り、自分も向こう側へ行きたいと強く願う。高校の同窓会で元彼の佐伯に思い切って頼むが、最後まですることはできなかった。しかもラブホテルの前でのやりとりを、会社のコピー機を整備に来る鍵谷千里に見られてしまう。

まい子の周りでも、それぞれが別の角度から同じ問題に向き合っている。子を持つ同僚の染井菜々は「母親なんだから」と言われることに戸惑い、有名漫画家になった元彼からの連絡に心を揺らす。同僚の原幸成は、自分はノンセクシャルで、誰にも性的な欲求を持てないとまい子に打ち明ける。かつての親友の復職に苛立つ美由紀は、同棲相手に当たり散らした末に出て行かれ、自分が怪物になっていくように感じるが、彼女を救ったのはその元親友だった。自分の容姿を嫌う派遣社員の小平蓮は、マッチングアプリで出会う男性たちと長く続かない。

まい子と鍵谷は、不器用に距離を縮めていく。レトロゲーム喫茶、気が重かったのに楽しめた食事。だが部屋に誘った夜、鍵谷は突然帰ってしまい、まい子は自分が迫ったせいだと思い込む。コピー機の担当も別の人に代わる。やがてずぶ濡れで追いかけてきた鍵谷は、過去のトラウマを打ち明け、まい子は思わず涙を流す。ふたりの不器用なキスは、幸せなものだった。ほどなく原が会社を辞め、その後任にまい子が指名される。けれど鍵谷とはまだ、恋人だと言葉にしてはいない。最終話、デートの途中で鍵谷は、俺じゃない方がいいんじゃないかと言い残して去ってしまう。ランチで同僚たちの恋愛観を聞いたまい子は、自分もまた気持ちを伝えていなかったと気づき、鍵谷の職場へ向かう。鍵谷は、正社員になるまでは会わないと勝手に決めていた、一緒にいて恥ずかしくない人間になりたかったと打ち明ける。まい子の部屋で、ふたりは一度は途中でやめるが、この人としたいという同じ気持ちで、もう一度向き合う。翌朝の食卓には瓜の漬物。怖れていた痛みの先にも、続きがあった。

主な出演

  • 久住小春香坂まい子役

    性体験のないことに悩む32歳の会社員。あたたかいセックスがしたいと願っている。

    香坂まい子の物語

    気難しい上司の美由紀にも同棲中の恋人がいると知ったまい子は、同窓会で元彼の佐伯に頼み込むが、最後まではできず、ラブホテルの前にいるところを、コピー機の整備に来る鍵谷に見られてしまう。惹かれていく彼を、思い切って食事に誘う。だが部屋に誘った夜に彼は突然帰り、自分が迫ったせいだと思い込む。ずぶ濡れで追いかけてきた鍵谷の過去を聞いて涙を流し、ふたりは不器用なキスを重ねる。デートの途中で鍵谷に去られたあと、同僚たちの恋愛観を聞いて、自分も気持ちを伝えていなかったと気づき、彼の職場の前で待つ。部屋で一度はやめ、もう一度向き合い、翌朝、ふたりで瓜の漬物を食べる。

  • 佐藤大樹鍵谷千里役

    まい子の会社のコピー機を整備する青年。彼女に惹かれながら、過去のトラウマに足をすくわれる。

    鍵谷千里の物語

    契約社員の鍵谷は29歳。夜遅くに故障したまい子のコピー機を直し、その後、元彼とラブホテルの前にいる彼女を見かける。ふたりは少しずつ近づいていく。だが彼女の部屋で、プロになった昔の将棋仲間のインタビューを目にして過去がよみがえり、突然帰ってしまう。ずぶ濡れでまい子を追いかけ、自分の問題だと告げて、母を亡くしてから打ち込んだ将棋でプロになれなかったことを打ち明け、ふたりはキスを交わす。だが契約社員のままの彼は、デートの途中で、俺じゃない方がいいんじゃないかと言い残して去る。正社員になるまで会わないと決めていたと、職場で待っていたまい子に打ち明け、彼女の部屋で、一度はやめ、もう一度向き合う。

  • 酒井若菜味園美由紀役

    まい子の厳しい上司。苛立ちを同棲中の恋人にぶつけてしまい、自分が怖くなる。

  • 土村芳染井菜々役

    子育て中の同僚。「母親」という役割に押し込められ、元彼からの連絡に心を揺らす。

  • 石川瑠華小平蓮役

    口の悪い派遣社員。容姿へのコンプレックスを抱え、アプリで出会う男性と長く続かない。

  • 泉澤祐希原幸成役

    まい子の同僚。自分はノンセクシャルで、誰にも性的な欲求を持てないと打ち明ける。

この作品が問いかけるもの

『瓜を破る』の中心にいるのは、30代になっても性体験がなく、それを恥じている女性だ。原作漫画は2024年10月時点で累計1055万部を超え、ドラマはその懐の広い形を受け継いで、まい子のまわりに別の方向から同じ問題に向き合う人々を置く。誰にも性的欲求を持たない同僚、母という役割にのみこまれた女性、自分の顔を嫌う女性、怒りで同棲相手を遠ざけてしまう上司。作品が退けるのは、セックスを越えるべきゴールとみなす考え方だ。第1話が求めるのは、ただのセックスではなく「あたたかいセックス」。描かれるのは、経験の少ない大人ふたりが、間違えることを恐れながら少しずつ親密さを築いていく、ぎこちなく気恥ずかしい道のりだ。