クズの本懐
Scum's Wish
ストーリー
結末まで書いています。
教師に片思いする二人が互いを代用品にする。身体で寂しさをしのぐ率直さ。
安楽岡花火と粟屋麦は、同じ高校に通う2年生の理想のカップルに見える。だが本当は違う。花火は、幼いころから「お兄ちゃん」と慕ってきた隣家の鐘井鳴海をずっと想っている。麦は、中学時代に家庭教師をしてくれた皆川茜を想い続けている。そのふたりが教師として高校に着任し、鳴海は花火の担任に、茜は音楽教師になる。鳴海のまなざしひとつで、花火は彼が茜を好きだと悟る。花火と麦は取り決めを交わす。互いを身代わりにし、求められればいつでも体の欲求に応え、相手を好きにならず、どちらかの恋が実ったら別れる、と。
物語には、ほかの孤独な人たちも集まってくる。電車で痴漢から救われて以来、花火を想い続ける親友の早苗は、お泊まり会の夜、花火に無理やり口づけする。花火は自分の弱さから体の関係を受け入れ、早苗を傷つけていく。麦の幼なじみのモカは、幼いころから麦を王子様のように慕っている。麦は花火にしているのと同じように彼女を利用しかけ、踏みとどまる。生徒に慕われる茜は、誰かに想われている男を奪うことに喜びを覚える女だった。鳴海と寝たと茜に告げられた花火は、茜の男のひとりに近づいて同じことをしようとするが、できない。
夏の終わり、花火と麦は約束どおり、それぞれの初恋の相手に想いを告げる。そのあと会う約束の場所に、麦は現れない。茜が言いくるめて、彼と関係を持っていたのだ。教師による教え子への性的虐待である。軽井沢への旅で花火はまた早苗を傷つけ、ふたりはいつか友達に戻ることを約束して別れる。麦はそのあとも茜にもてあそばれ続け、やがて自分が理想化していた茜はどこにもいないと知って、別れを告げる。ふたりの男の好意を手にしてなお満たされない茜は、自分の本当の気持ちに気づき始める。そして、彼女の本性を知ったうえで結婚を申し込んだ鳴海に、茜は応える。
最終話、鳴海は花火に、茜と結婚すると告げ、花火は式に出ると約束する。文化祭では、ファッションショーでウエディングドレスをまとったモカが堂々と歩き、彼女の裁縫の腕を認める仲間に囲まれている。何か月も口をきいていなかった花火と麦は、倉庫でふたりきりになり、初めて体ではなく言葉を交わす。取り決めを結び直すこともできたが、ふたりとも求めているのは激しい恋で、互いのあいだにあったのはそれではなかった。それでも出会えてよかったと認め合い、ふたりは別れを告げる。三月、髪を短く切った早苗がふたたび花火と言葉を交わし、花火は涙を流す。茜は、生徒たちから贈られた花束の一輪を花火に手渡す。のちに描かれた続編の漫画でふたりは再会するが、それはアニメ化されていない。
主な出演
安済知佳安楽岡花火役
幼いころから慕う担任の鳴海に恋をする優等生。麦をその身代わりにする。
安楽岡花火の物語
花火は、幼いころから「お兄ちゃん」と慕う隣家の鳴海を想い続けてきた。その鳴海が担任として現れた日、彼のまなざしひとつで、茜を好きなのだと悟る。麦と、互いの身代わりになり、体の欲求にも応え、決して好きにならないという取り決めを結ぶ。自分を想う早苗とも体の関係を受け入れ、そのたびに早苗を傷つける。鳴海と寝たと茜に告げられ、茜の男に近づいて同じことをしようとするが、できない。夏の終わり、約束どおり鳴海に想いを告げて麦を待つが、麦は来ない。旅先でまた早苗を傷つけ、ふたりは離れる。数か月後、倉庫で麦とふたりきりになり、初めて体ではなく言葉を交わして、別れを告げる。三月、髪を短くした早苗がふたたび話しかけ、花火は泣く。
島﨑信長粟屋麦役
かつての家庭教師・茜を想い続ける人気者の生徒。花火と身代わりの取り決めを交わす。
粟屋麦の物語
麦は、中学時代に家庭教師をしてくれた茜をずっと想っている。花火と身代わりの取り決めを結び、幼なじみのモカを同じように利用しかけて、踏みとどまる。夏の終わり、約束どおり茜に想いを告げるが、花火との待ち合わせには行かない。茜に言いくるめられて関係を持ったのだ。教師による教え子への性的虐待である。茜はそのあとも彼をもてあそび、自分だけのものにしようとする彼の願いさえ遊びに変える。一度きりのデートのあと、鳴海と結婚すると告げられ、理想の茜はどこにもいなかったと知って、別れを告げる。数か月後、倉庫で花火とふたりきりになると、初めて言葉を交わす。出会えてよかったと認め合い、ふたりは別れる。
野島健児鐘井鳴海役
花火の隣家で育った温厚な担任教師。花火の想いに気づかず、茜に恋をしている。
豊崎愛生皆川茜役
生徒に慕われる音楽教師。誰かに想われている男を奪うことを好み、それでも満たされない。
皆川茜の物語
茜は生徒に慕われる音楽教師だが、喜びを覚えるのは、誰かに想われている男を奪うことだ。花火が慕う鳴海に近づき、彼と寝たと花火に告げる。かつて家庭教師をした麦に想いを打ち明けられると、言いくるめて関係を持ち、もてあそび続ける。教師による教え子への性的虐待である。だが鳴海は彼女を追い求めない。昔の男が彼の前で彼女の男遍歴をあざけったとき、すべてを認めて去られるのを待つ彼女を、鳴海は受け入れる。自分の気持ちに戸惑いながら温泉旅行に同行し、本性を知ったうえでの求婚に応える。麦には一度きりのデートを与えて終わらせ、三月、生徒から贈られた花束の一輪を花火に手渡す。
戸松遥絵鳩早苗役
花火の親友。電車で痴漢から救われて以来、花火を想い続けている。
井澤詩織鴎端のり子(モカ)役
麦の幼なじみ。自らをモカと名乗り、幼いころから麦を王子様として慕っている。
この作品が問いかけるもの
『クズの本懐』は、十代の恋のなかでいちばん美しいとされるもの、報われない一途な片想いを取り上げ、それを内側から見せる。嫉妬、取引、痛み止めとして使われる体。花火と麦は、互いに、そして自分を想ってくれる人たちにしていることを思って自らをクズと呼ぶ。作品は彼らを弁護も断罪もせず、ただ見つめる。十代の欲望、とりわけ少女の欲望について驚くほど率直で、孤独な人がいかにたやすく誰かの身代わりになるかを描いている。大人たちも逃げ場にはならない。学校でいちばん慕われる教師は、他人の好意を奪うものとして扱う。アニメは2017年初めにフジテレビの深夜枠「ノイタミナ」で放送され、同じ局では実写ドラマも放送された。愛してくれない人を愛し続けることは献身なのか、それとも何も賭けずにすむための方法なのか。作品はその問いを残していく。