その着せ替え人形は恋をする
My Dress-Up Darling
ストーリー
結末まで書いています。
雛人形職人の孫がギャルのコスプレ衣装を縫う。手仕事が親密さになる。
高校1年生の五条新菜は、岩槻で雛人形店を営む祖父と暮らし、人形の顔を作る頭師を目指している。幼いころ、仲のよかった女の子に「男なのに雛人形が好きなんて気持ち悪い」と言われて以来、友達を作らずに生きてきた。家のミシンが壊れ、学校の被服室で雛人形の衣装を縫っていたところを、クラスの人気者の喜多川海夢に見られる。海夢は笑わなかった。目を輝かせ、大好きな成人向けゲームのヒロイン、雫のコスプレ衣装を作ってほしいと頼む。アニメもゲームも隠さず好きだと言う彼女に、足りないのは裁縫の腕だけだった。
祖父が転んで入院するなか、新菜は締め切りに追われて衣装を仕上げる。初めてのコスプレイベントの帰りの電車で、半分眠りながら新菜は、海夢に「奇麗だった」とつぶやく。心から思ったときにしか口にしない言葉だった。海夢は恋に落ちるが、新菜は気づかない。やがて、年齢より幼く見える人気コスプレイヤーのジュジュこと乾紗寿叶から衣装の依頼が届く。新菜は、姉の写真を撮りながら自分では踏み出せずにいた長身で内気な妹・心寿の衣装も、そっと仕立てる。第1期は夏祭りのあと、電話の向こうで眠ってしまった新菜に、海夢が好きだと告げるところで終わる。
第2期はハロウィーンから冬へ。海夢は文化祭の男装ミスコンにホスト姿で出て優勝する。その衣装はクラスメイトの手を借りてようやく完成し、新菜は初めて人に頼ることを覚える。女装コスプレで自信を得た青年・姫野あまねや、親にアニメを禁じられて育った造形師のアキラとも親しくなる。電車が止まって新菜が海夢の部屋に泊まった夜のすれ違いを経て、海夢は想いを伝えようと決める。最終話は、ホラーゲームの合わせ撮影。妹のために怖がりを隠していたジュジュは倒れ、海夢を避けているように見えたアキラは、実は熱烈なファンだったとわかる。そしてふたりは、まだ恋人ではないまま一緒に帰っていく。2025年に完結した原作はその先でふたりを結ばせるが、アニメはその手前で終わる。
主な出演
石毛翔弥五条新菜役
祖父に育てられた、頭師を目指す内気な少年。幼いころから好きなものを隠してきたが、海夢の依頼で衣装を縫い始める。
五条新菜の物語
新菜の望みは、祖父のような頭師になることだけだ。幼いころ仲良しの女の子に雛人形好きを「気持ち悪い」と言われて以来、友達はいない。海夢に衣装を頼まれると、雛人形と同じ真剣さで向き合い、元のゲームを遊び、型紙を起こし、祖父の入院のさなかに締め切りと闘って仕上げる。イベント帰りの電車で、心から思ったときにしか言わない「奇麗だった」を口にするが、それが海夢に何をもたらしたかには気づかない。自分でもコスプレをしたかった心寿の衣装も、そっと仕立てる。第2期、文化祭の衣装をひとりで抱え込んだ彼は、クラスメイトの手を借りることを覚え、教室で孤立しなくなる。物語の終わり、彼はまだ恋人ではない海夢と並んで帰っていく。
直田姫奈喜多川海夢役
アニメやゲームを隠さず愛するクラスの人気者。コスプレに憧れるが裁縫ができず、やがて新菜に恋をする。
喜多川海夢の物語
海夢は早くに母を亡くし、単身赴任の父と離れてひとりで暮らしている。好きなものを何ひとつ隠さない彼女にも、裁縫だけはできない。被服室でミシンを使う新菜を見つけ、憧れの雫の衣装を頼み込む。初めてのイベントの帰り、半分眠った新菜に「奇麗だった」と言われ、それが特別な言葉だと知っている彼女は恋に落ちる。新菜は気づかない。子どものころどこにも行けなかった彼をあちこちへ連れ出し、電話の向こうで眠ってしまった彼に好きだと告げる。第2期では、彼がぎりぎりで仕上げたホスト姿で文化祭の男装ミスコンに優勝し、電車が止まって彼が部屋に泊まった夜のすれ違いのあと、想いを伝えようと決める。物語は、まだ恋人ではないふたりが一緒に帰るところで終わる。
種﨑敦美乾紗寿叶(ジュジュ)役
新菜より一学年上の人気コスプレイヤー。幼く見える自分を気にしながら、妹を何より大切にしている。
羊宮妃那乾心寿役
ジュジュの妹で撮影担当。長身で気が弱く、ひそかに抱いていたコスプレへの憧れを新菜の手でかなえる。
斧アツシ五条薫役
新菜の祖父で雛人形の頭師。両親を亡くした孫を育て、友達のいない彼をひそかに案じている。
この作品が問いかけるもの
『その着せ替え人形は恋をする』は、恥と、それが溶けていく過程の物語だ。新菜は「男なのに人形なんて」と言われた日から好きなものを隠してきた。海夢は何も隠さない。成人向けゲームへの愛さえも。物語は輪を広げていく。女装コスプレで自分を取り戻し、そのために恋人を失った青年。親にアニメを取り上げられた女性。幼く見えることを恐れる年上の少女。好きなものをたったひとりに真剣に受け止めてもらうことが人生を変える、というのが作品の主張だ。アニメ・ニュース・ネットワークの評者のひとりは、あからさまなお色気描写に賛否があると指摘した。別の評者は、海夢が新菜を救うのではなく互いに夢へ近づくこと、そして同じ趣味の人ではなく趣味を尊重してくれる人を選ぶという価値観を評価している。