生理のおじさんとその娘
Menstrual Uncle and His Daughter
ストーリー
結末まで書いています。
生理用品メーカーで広報を務める父は、動画が広まって“生理のおじさん”として有名になった。高校生の娘はうんざりしている。
生理用品メーカーの広報マン・光橋幸男は、高校生の娘・花と、中学生の息子・嵐を男手ひとつで育てている。妻の楓は婦人科の病気で若くして亡くなった。その病に気づけなかった悔いから、幸男は生理の啓発に打ち込み、娘が持ち歩くポーチまで自分で詰めている。半年前、生理についてよく知ろうと呼びかける動画がバズり、幸男は「生理のおじさん」として昼の生番組にも出る人気者になった。学校で「生理のおじさんの娘」といじられる花は、そんな父にいらだっている。嵐は、日常の会話をなんでもラップにしてしまう。
番組で共演するコメンテーターで婚活アドバイザーの北城うららに、女性のことを全然分かっていないと挑発された幸男は、思わず、自分は娘の生理周期も把握していると口にする。スタジオは凍りつき、ネットは炎上し、会社には苦情が殺到する。経営陣は、騒ぎを収められなければ広報を降りろと告げる。テレビ局で偶然会ったうららは、男性が生理の啓発をすることには賛同できないが、家族に認められなくても世の中のために動く姿勢には共感すると打ち明ける。
花は家を出て、同級生の月坂さんの家に身を寄せる。夕食の席で月坂さんの経血が漏れると、兄は露骨に顔をしかめ、父はそのことで母を責める。おかしいと声を上げた花を父が嘲ると、月坂さんは怒りを爆発させ、花は彼女を連れて家に帰る。同じ夜、公園で憧れのラッパー・柚子葉が生理でつらそうなのに気づいた嵐は、家にナプキンならたくさんあると声をかけ、からかう少年たちに言い返す。
光橋家では、部下の橘正樹の発案で、謝罪動画の撮影準備が進んでいた。そこへ全員が集まってくる。亡き母と、父とけんかしないと約束していた花に、嵐はラップはけんかじゃないと言い、父と娘はラップで本音をぶつけ合う。正樹も柚子葉も月坂さんも加わり、幸男は、生理とのつき合い方は人それぞれだと知っていく。後日、幸男はうららの手引きで番組に乗り込んでゲリラ謝罪をし、男性にも生理を知ってほしいが、分かった気になってはいけなかったと語る。その動画はバズってアンチも増えるが、やがて騒ぎは静まる。花は自分で選んだ生理用品をポーチに詰めるようになる。月坂さんから好きだと告げられた花はその想いに応え、ふたりはつき合い始める。嵐は、柚子葉からラップを教わる約束を取りつける。広報を続けることになった幸男は、正樹とともに、婦人科に行くべきときを伝える動画を配信する。
主な出演
原田泰造光橋幸男役
生理用品メーカーの広報マン。妻を亡くし、ふたりの子を育てる。「生理のおじさん」として有名だが、自分に生理の経験はない。
光橋幸男の物語
幸男は生理用品メーカーの研究員だったが、気づくのが遅れた病で妻の楓を亡くし、広報に移った。今では誰にでも生理のことを語り、娘のポーチまで自分で詰めている。昼の生番組で挑発されると、娘の生理周期まで把握していると口走って炎上し、騒ぎを収めなければ広報を降りろと会社に告げられる。家出した花が同級生を連れて帰ると、居間のラップバトルで娘の本音を初めて聞き、月坂さんや柚子葉からも、それぞれの生理とのつき合い方を聞く。うららの手引きで番組に乗り込んで謝罪し、男性にも知ってほしいが、分かった気になってはいけなかったと語る。広報を続けることになった彼は、婦人科に行くべきときを伝える動画を配信する。
上坂樹里光橋花役
幸男の娘で高校生。「生理のおじさんの娘」といじられ、父にいらだつ。亡き母と、父とけんかしないと約束している。
光橋花の物語
父が自分のポーチまで詰めても、花は何も言わずにきた。父の発言で騒ぎが起き、会社が火消しに自分を使おうとしていると知ると、家を出て同級生の月坂さんの家に身を寄せる。夕食の席で、月坂さんの生理に顔をしかめる兄と、それを母のせいにする父に声を上げ、彼女を連れて家に帰る。ラップはけんかじゃないという弟の言葉に押され、ラップバトルで初めて父に本音をぶつける。それからは、自分で選んだ生理用品を自分でポーチに詰める。月坂さんから好きだと告げられ、ふたりは付き合い始める。
齋藤潤光橋嵐役
花の弟で中学生。日常の会話をラップにしてしまう。憧れのラッパーをかばい、からかう仲間に言い返す。
三山凌輝橘正樹役
幸男を尊敬する会社の部下。ネットに強く、自宅での謝罪動画を提案する。
菊地凛子北城うらら役
婚活アドバイザーで、情報番組のコメンテーター。番組で幸男とぶつかるが、のちに謝罪の場へ導く。
麻生久美子光橋楓役
幸男の亡き妻。夫が気づけなかった病で若くして亡くなった。物語の語り手でもある。
この作品が問いかけるもの
『恋せぬふたり』の吉田恵里香が脚本を書いたこの単発ドラマは、生理を家族の喜劇の真ん中に置き、主人公にあえて男性を選ぶ。演出の橋本万葉は、長年ドラマを作りながら生理中の人物を一度も描いたことがなかったと振り返り、日本のジェンダー・ギャップ指数が世界121位だと知ったことから企画を立てた。生理に詳しいが自分では経験のない男性を中心に据えたのは、知識だけでは現状は変わらないと伝えるためだという。描きたかったのは、生理のある人とない人とのコミュニケーションだ。アニメーションやラップバトルを交えて明るく進むが、何でも話せる家と、娘の経血漏れに男たちが顔をしかめる家との対比は鋭い。少女ふたりの恋も、ことさら特別なものとしてではなく描かれる。第60回ギャラクシー賞奨励賞を受けた。