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Cinema 月明かりの映画館

もう頬づえはつかない

No More Easy Life

1979映画日本

465作品の星図のなかで見る

ストーリー

結末まで書いています。

二人の男の間で、どちらのものにもならないと決める女子大生。“自立する女”の1979年。

1970年代の東京。大学生のまり子は男子禁制の女子アパートに暮らしている。娘を呼び戻したい母親に仕送りを止められ、アルバイトで食いつないでいる。一年ほど付き合った年上のルポライター、全共闘世代の恒雄は、半年前に不意に出ていった。いまは、電話番のアルバイトで知り合った軽薄な学生の橋本と、好きでもないのに成り行きで関係を続けている。

大家の高見沢の口ききで、まり子はその妻トキ子の美容室で働き始める。ところがトキ子は夫にほかの女がいると疑い、夫の足を刃物で刺す。事件にはならずに夫婦は元のさやに収まったものの、まり子は職を失う。そこへ半年ぶりに恒雄が現れる。嫉妬して突っかかった橋本は、あっけなく突き飛ばされる。

やがてまり子は妊娠に気づく。恒雄の子だった。中絶には相手の男の署名が要る。ようやく電話をよこした恒雄は話も聞かず、30万円を作れと一方的に言うだけだった。別居中の父親に会っても、金のことは言い出せない。就職を決めて帰省先から戻った橋本は、まり子との結婚を考えている。

まり子はひとりで産婦人科を訪ね、恒雄の署名を偽って手術を受ける。帰りに花屋でカスミソウを買って部屋に飾り、冷蔵庫のセロリを部屋の隅で黙々とかじる。橋本には別れの書き置きを一枚だけ残す。会えば「堕ろせ」としか言わない恒雄は、やくざがらみの記事がもとで30万円を払えと脅され、逃げ回っていたのだった。自分のことしか考えない男に見切りをつけ、まり子は席を立つ。街で声をかけてくる男も相手にしない。最後に映るのは、アパートを出るためにひとりで明るく荷造りをする彼女の姿だ。

主な出演

  • 桃井かおりまり子役

    アルバイトで暮らす大学生。ふたりの男のあいだを漂い、妊娠をきっかけに自分で決めることを選ぶ。

    まり子の物語

    まり子はかつて、年上のルポライター恒雄のために薬科大学を中退し、早稲田に入り直した。一緒に暮らした恒雄は半年前に出ていき、いまは電話番のアルバイトで知り合った軽薄な学生の橋本と、好きでもないのに関係を続けている。大家の妻の美容室の仕事も失う。そこへ恒雄が戻り、やがて彼の子を身ごもったと気づく。ようやく電話をよこした恒雄は話も聞かず、30万円を作れと言うばかりで、別居中の父親にも金のことは言い出せない。まり子はひとりで産婦人科を訪ね、恒雄の署名を偽って手術を受け、部屋の隅でセロリを黙々とかじる。橋本には別れの書き置きを残し、自分のことしか考えない恒雄の前から席を立つ。最後に彼女は、アパートを出るために明るく荷造りをしている。

  • 奥田瑛二橋本役

    成り行きで関係を続ける軽薄で陽気な学生。就職が決まると、まり子との結婚を考え始める。

    橋本の物語

    橋本は、電話番のアルバイトでまり子と一緒に働く学生だ。彼女の最後の出勤日にコンサートに誘い、それからは時おり彼女の部屋を訪れて関係を持つようになる。頭にあるのは体のことばかりで、避妊具を嫌ってピルを飲むよう勧める。ピルを持つ同じアパートの明美のもとへまり子を連れていくと、女にばかりピルを飲ませる男たちへの不満を明美にぶつけられる。半年ぶりに戻った恒雄に嫉妬して突っかかり、あっけなく突き飛ばされる。故郷の鹿児島で就職を決めて東京に戻った彼は、まり子と結婚して故郷へ連れて帰るつもりでいる。だがまり子はひとりで中絶の手術を受け、彼には別れを告げる一枚の書き置きだけを残す。

  • 森本レオ恒雄役

    まり子の年上の元恋人で、全共闘世代のルポライター。ふらりと現れては消え、自分のことしか考えない。

    恒雄の物語

    恒雄は三十を過ぎても芽の出ないルポライターだ。まり子は彼のために薬科大学をやめ、ふたりは一年ほど暮らしたが、半年前に彼は不意に部屋を出ていった。留守がちで連絡もつかず、喧嘩っ早く、三流雑誌でようやく得た仕事も行き詰まる。半年ぶりに現れた彼は、突っかかってきた橋本をあっけなく突き飛ばす。やがてまり子は彼の子を身ごもるが、ようやく電話をよこした恒雄は話も聞かず、30万円を作れと言うばかりだ。会っても妊娠については「堕ろせ」としか言わない。やくざがらみの記事がもとで金を払えと脅され、逃げ回っていたのだった。自分のことしか考えない男に見切りをつけ、まり子は席を立って去っていく。

  • 伊丹十三高見沢役

    男子禁制のアパートに目を光らせる大家。家賃をためたまり子に、妻の美容室の仕事を世話する。

  • 加茂さくらトキ子役

    大家の妻で、美容室の店主。夫にほかの女がいると疑い、刃物で刺してしまう。

この作品が問いかけるもの

原作は、見延典子が早稲田大学の卒業制作として書いた小説だ。性を乾いた筆致で淡々と綴り、「まるで自分のことが書かれているようだ」と同世代の女性たちに読まれて、50万部のベストセラーになった。映画もその温度を保っている。まり子はふたりの男と寝たことで罰せられもしないし、どちらかに救われもしない。描かれる問題は具体的で、いまも身近だ。避妊具を嫌ってピルを勧める恋人、男の署名がなければ受けられない中絶、恋人の妊娠を自分の厄介事としか受け取らない男。映画初主演の桃井かおりはこの年、数々の主演女優賞を得て、作品のヒットは日本アート・シアター・ギルドに12年ぶりの営業黒字をもたらした。残る問いは静かだ。愛していると言う男たちに、若い女は何を負っているのか。そして自分自身には、何を負っているのか。