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Cinema 月明かりの映画館

ヴァイブレータ

Vibrator

2003映画日本

465作品の星図のなかで見る

ストーリー

結末まで書いています。

過食嘔吐と幻聴を抱える女性ライターがコンビニでトラック運転手と出会い、北へ。寺島しのぶの出世作。

31歳のフリーのルポライター、早川玲は、いつの頃からか頭の中で聞こえる「声」に悩まされている。眠れず、酒に頼り、過食と嘔吐を繰り返す日々だ。雪の夜、コンビニでワインを選ぼうとしても、声に邪魔されて選べない。そこへ金髪の若い男が入ってくる。この人を食べたい。そう感じた玲は、店を出た男を追い、大型トラックの助手席に乗り込む。男はフリーの長距離トラック運転手、岡部希寿だった。勧められるまま焼酎を飲み、人が怖いと話しながら、触りたいと必死につぶやく玲を、岡部は運転席の後ろの寝台に誘う。ふたりはアイドリングの振動を感じながら肌を重ねる。

夜明け、いったんトラックを降りた玲は、路上で吐き、それから戻ってきて、道連れにして、と頼む。岡部はそれを受け入れ、トラックは東京から新潟へ向けて走り出す。岡部は、自分には妻子がいること、ストーカーにつきまとわれていること、かつてヤクザだったころの悪事を面白おかしく話す。玲は、酒と食べ吐きのことを打ち明ける。無線でほかの運転手たちと話すうち、声が戻ってくる。ガソリンスタンドで、玲は気持ちが悪いと泣きながら岡部を叩き、自分の頭を叩き続ける。立ち寄ったモーテルで、岡部はやさしく彼女を風呂に入れ、玲はその胸で泣きじゃくる。

翌日、そば屋で玲は、自分には男がいると言い、それは嘘だと打ち明ける。あなたの妻子も嘘でしょう、と言う玲に、岡部はうなずく。食事のあと、岡部は玲にトラックを運転させる。こわごわハンドルを握った玲の顔に、やがて笑みが浮かぶ。頭の中の声は、いつのまにか消えていた。トラックは、ふたりが出会ったコンビニに戻ってくる。無言で見つめ合ったあと、トラックは走り去る。ひとり残った玲は、無線を終える合図だった口笛を小さく吹き、店に入って、迷わずにワインを選ぶ。

主な出演

  • 寺島しのぶ早川玲役

    頭の中の声に苦しむ31歳のフリーのルポライター。酒と食べ吐きに頼る日々から、見知らぬ男のトラックに乗り込む。

    早川玲の物語

    玲は眠れず、食べては吐く。取材で患者の話を聞いてから、吐くと安心して眠れるようになったのだという。雪の夜、見知らぬ男を食べたいという衝動に駆られて岡部のトラックに乗り込み、座席の後ろの寝台で肌を重ね、夜明けに路上で吐いてから、道連れにしてと頼む。無線でしゃべるうちに声が戻り、ガソリンスタンドで岡部を叩き、自分の頭を叩き続ける。モーテルで彼に風呂に入れてもらい、その胸で泣きじゃくる。翌日のそば屋で、自分には男がいるという嘘を明かし、彼の妻子も嘘だと言い当てる。ハンドルを握らされた彼女の顔に、やがて笑みが浮かぶ。出会ったコンビニで降ろされた玲は、無線を終える合図の口笛を小さく吹き、迷わずにワインを選ぶ。

  • 大森南朋岡部希寿役

    元ヤクザの若い長距離トラック運転手。玲を乗せて新潟まで走り、また連れ帰る。

    岡部希寿の物語

    岡部は雪の夜、助手席に乗り込んできた見知らぬ女に焼酎を勧め、触りたいとつぶやく彼女を運転席の後ろの寝台に誘う。夜明けに道連れにしてと頼まれると、そのまま新潟へ向けて走り出す。道中、妻子がいること、ストーカーにつきまとわれていること、ヤクザだったころの悪事を面白おかしく話す。無線を切るときには口笛を吹く。声に襲われた玲にガソリンスタンドで叩かれても見捨てず、モーテルでやさしく風呂に入れてやる。翌日のそば屋で、あなたの妻子も嘘でしょうと言われてうなずく。食事のあと、こわがる玲にトラックを運転させ、ふたりが出会ったコンビニまで彼女を送り届ける。無言で見つめ合ったあと、彼はひとりで走り去る。

この作品が問いかけるもの

『ヴァイブレータ』は、自分の体が住めない場所になってしまった女性の物語だ。頭の中の声、酒、食べ吐き、眠れない夜。結末を回復の物語として読むのはたやすい。だが映画が差し出すのは、もっと控えめなものだ。ひるまずに触れてくれる相手と過ごす数日。嘘をつき、それを認める男。彼女にハンドルを任せる男。ここでの性は罰でも救いでもなく、自分の体がパニック以外のものを感じられると知るための道筋として描かれる。赤坂真理の小説を荒井晴彦が脚色したこの映画は、女性の欲望に率直で、玲を症例として扱うことが一度もない。行きずりの出会いに、深いやさしさを注いでいる。一度の旅がどこまで続くのかは示されない。最後の場面はありふれていて、希望がある。一本のワインを、迷わずに選べる女性。