ジムノペディに乱れる
Aroused by Gymnopedies
ストーリー
結末まで書いています。
落ちぶれた映画監督と女たち。ロマンポルノ・リブート作品。
古谷慎二は、かつて海外の映画祭で称賛された映画監督だった。五十代になったいまは、片足を引きずり、金もなく、低予算の雇われ仕事で食いつないでいる。今度の仕事は成人映画だ。撮影現場で主演女優の安里がベッドシーンを拒み、相手役に文句をつける。古谷は力ずくで説き伏せようとするが、安里は降板し、企画は流れる。それからの一週間、古谷は家に帰らない。サティの「ジムノペディ」が流れるなか、金と人肌を求めて東京をさまよう。
駅前で声をかけてきたのは、映画学校の教え子だった結花だった。裕福な実家のおかげで一軒家にひとりで暮らす彼女の家に上がり込むが、恋人の荒木が現れると、古谷は結花の貯金箱を盗んで逃げ出す。若い俳優たちの飲み会で安里と再会すると、彼女は古谷が足を引きずるようになった自動車事故の話を聞き、店を出た彼を追いかける。ふたりは廃墟のような工事現場の跡で体を重ねる。客のまばらな特集上映の壇上では、荒木が観客の前で結花とのことを責め立て、安里が古谷を平手打ちし、会場は乱闘になる。
病院から、入院費が滞っていると電話が来る。古谷は、撮影所で美術の仕事をしながら彼との子をひとりで育てている元妻の倫子に、金を無心する。倫子は、自分に気のある同僚の本間に抱かれて金をつくり、古谷に渡す。病室には、意識のないまま眠り続ける妻の雪子がいる。古谷と関係を持った若い看護師が、なぜ自分を抱いたのかと詰め寄ると、古谷はその場で、ベッドの傍らで彼女に関係を強いる。嫉妬深かった雪子が目を覚ますかもしれないと考えたのだ。駆けつけた医師たちの前で、古谷は雪子の手がかすかに動くのに気づき、その手を握って涙を流す。
家に戻ると、玄関の前で結花が待っていた。結花がピアノを弾き始めると、古谷には、雪子が「ジムノペディ」を弾いている姿が重なって見える。結花は、奥さんの姿を見た、と言い出す。そのころ病院では、雪子の容態が急変していた。古谷は叫び声をあげながら、病院へと走り出す。
主な出演
板尾創路古谷慎二役
かつて海外で評価された映画監督。いまは雇われ仕事で食いつなぎ、一週間、女と借金のあいだを漂う。
古谷慎二の物語
成人映画の撮影で、ベッドシーンを拒む主演の安里を古谷は力ずくで説き伏せようとするが、安里は降板し、企画は流れる。それから一週間、古谷は家に帰らない。教え子の結花と寝て貯金箱を盗んで逃げ、安里を抱き、客のまばらな特集上映は乱闘で終わる。入院費の催促を受けると元妻の倫子に金を無心し、倫子は同僚に抱かれて金をつくる。意識のないまま眠る妻の雪子の病室で、関係を持った看護師に詰め寄られると、古谷はベッドの傍らで彼女に関係を強いる。嫉妬で妻が目覚めるかもしれないと考えたのだ。雪子の手がかすかに動き、彼は泣く。家に戻り、結花がピアノを弾くと、そこに「ジムノペディ」を弾く雪子の姿が重なる。やがて雪子の容態が急変し、古谷は叫びながら病院へ走り出す。
芦那すみれ山口結花役
古谷の映画学校時代の教え子。裕福な家の娘で、一軒家にひとりで暮らしている。
山口結花の物語
結花は映画学校で古谷に教わっていた学生だ。駅前で彼を見かけて声をかけ、実家のお金で暮らす一軒家に連れて帰り、私には先生が必要なのと言う。そこで古谷と寝たあと、恋人の荒木が現れると、古谷は彼女の貯金箱を盗んで逃げ出す。結花は荒木と連れ立って古谷の特集上映に行き、荒木は数少ない客の前で、教え子に手を出したと古谷を責め立て、会場は乱闘になる。古谷の一週間の終わりに、結花は彼の家の玄関の前で待っている。家に入れてもらった彼女がピアノを弾き始めると、古谷にはそこに妻の雪子の姿が重なって見える。結花は、奥さんの姿を見た、と言い出す。そのころ病院では雪子の容態が急変し、古谷は病院へと走り出す。
岡村いずみ安里役
古谷の新作の主演女優。ベッドシーンを拒んで降板するが、やがて彼を追いかける。
田嶋真弓倫子役
古谷の元妻。撮影所で美術の仕事をしながら、彼との子をひとりで育てている。
宮本裕子古谷雪子役
古谷の妻。高額な病院で意識のないまま眠り続ける。かつて「ジムノペディ」を弾いていた。
この作品が問いかけるもの
『ジムノペディに乱れる』は、日活ロマンポルノを復活させる2016年の企画の第1弾として公開された。低予算、一週間ほどの撮影、十分に一度の濡れ場という型を、行定勲監督は、崩れていく男を追うために使った。どの交わりも欲望として撮られながら、ふたを開ければ取り引きになっている。一晩の寝床、盗んだ貯金箱、そして死にゆく妻の入院費のために元妻が身を売ってつくる金。彼を助けた女たちは、貧しくなり、辱められ、あるいは忘れられていく。映画はそのことを知っている。残る問いは、彼に同情できるかどうかより重い。言葉にできない悲しみは、手の届く人すべてを使い尽くす飢えに変わるのか。それを知ることは男を理解することなのか、ただ描き出すことにすぎないのか。