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ストーリー
結末まで書いています。
元恋人が娘を連れて現れる。岐阜の田舎でのゲイの父親像。
井川迅と日比野渚は、高校時代から大学の終わりまで恋人どうしだった。男どうしでは将来が見えない、と別れを切り出したのは渚だった。八年後、30歳になった迅は、ゲイであることを知られないよう東京の会社を辞め、岐阜県白川町でひとり、畑を耕して自給自足の暮らしをしている。人付き合いは避けているが、近所の猟師の緒方だけはさりげなく迅を気にかけている。
そこへ渚が、6歳の娘・空を連れて現れる。通訳の玲奈の妊娠を機に結婚し、働く妻に代わって空を育ててきたが、妻にゲイであることを打ち明け、いまは離婚調停中だという。迅に思いを寄せる町の移住サポート課の美里が、ふたりの暮らしを手助けする。クリスマスの日、玲奈がやってきて空を連れ帰る。渚は空を無断で連れ出していたのだ。渚は迅に、結婚すれば自分はゲイではないと思い込めると考えたこと、ずっと迅を求めていたことを打ち明け、ふたりはわだかまりを解く。一方、仕事と裁判に追いつめられた玲奈は空に手をあげ、昼から酒に酔って眠り込む。空はひとりで父のもとへ向かおうと家を出て、警察に保護され、渚が迎えに行く。渚はパイプオルガン工房で働き始める。迅は美里の告白を丁寧に断る。
空は、父と迅の口づけを見たことを公民館の寄り合いで話してしまう。かつて東京の職場で同僚に秘密を暴かれた迅は身構えるが、緒方は迅を猟に誘い、堂々としていればいいと言う。緒方の通夜の席で、迅は村の人たちに自分がゲイだと告げる。この年になれば男も女も関係ない、とひとりの老人が言い、場の空気がほどける。法廷では、相手方の弁護士が迅と美里を厳しく問いつめる。一方で渚の弁護士は、玲奈が娘について簡単な質問にも答えられないことを示す。だが渚は裁判を止め、玲奈を深く傷つけたことを謝り、親権を彼女に譲る。そして迅の腕の中で泣く。初夏、自分の母の偏見を目にした玲奈は、空に自転車の乗り方を教え、渚のもとへ連れてくる。はしゃぐ父と娘を眺めながら、実は自分は自転車に乗れないのだと打ち明け、皆で笑い合う。
主な出演
宮沢氷魚井川迅役
東京を離れ、岐阜の小さな町で自分を隠してひとり暮らすゲイの男性。元恋人の来訪で暮らしが揺らぐ。
井川迅の物語
迅は五年間ともに過ごした渚から別れを告げられた。東京の会社で同僚に過去を暴かれて職を辞し、白川町で畑を耕しながら、人を避けて暮らしている。空を連れて現れた渚を渋々泊める。クリスマスに玲奈が空を連れ帰ったあと、ずっと迅を求めていたと渚に打ち明けられ、ふたりはわだかまりを解く。空が公民館でふたりの口づけを話してしまうと身構えるが、緒方に猟へ誘われ、堂々としていればいいと言われる。緒方の通夜で、村の人たちの前でゲイであることを明かすと、この年になれば男も女も関係ない、と老人が言う。親権を譲って泣く渚を抱きしめ、初夏、玲奈が空を連れて訪ねてきた日には、皆と一緒に笑う。
藤原季節日比野渚役
迅の元恋人。結婚して父親になり、妻にゲイだと打ち明け、娘を連れて迅のもとへ現れる。
日比野渚の物語
渚は、男どうしに将来はないと言って、大学の終わりに迅と別れた。玲奈の妊娠を機に結婚し、働く妻に代わって空を育て、結婚すれば自分はゲイではなくなると思い込もうとしたが、男性と関係を持つようになり、妻に打ち明けた。離婚調停のさなか、玲奈に黙って空を迅のもとへ連れていき、ずっと迅を求めていたと認める。パイプオルガン工房でパイプを洗う仕事に就き、ひとりで父を探しに出て保護された空を迎えに行く。法廷では、娘についての簡単な問いにも玲奈が答えられないことを弁護士が示すが、勝てたはずの裁判を渚は止める。妻を傷つけたことを謝り、親権を彼女に譲り、迅の腕のなかで泣く。初夏、玲奈が空を連れてくる。
松本若菜日比野玲奈役
渚の妻で通訳。家計を支えてきたが、空の親権をめぐって夫と争う。
日比野玲奈の物語
玲奈は妊娠を機に渚と結婚し、夫が空を育てるあいだ、働いて家計を支えてきた。夫からゲイだと打ち明けられて親権を争い、クリスマスには迅の家から空を連れ戻す。不規則な仕事と裁判の準備に追われて空に手をあげ、頼った母には嫌味を言われ、昼から酒を飲んで眠り込む。その間に、空はひとりで父を探しに家を出る。法廷では、娘についての簡単な問いにも答えられない。渚が裁判を止め、親権は彼女のものになる。口を出す母を諫めたとき、母の同性愛への偏見を目にする。渚の助言で空に自転車の乗り方を教え、初夏、娘を連れて渚を訪ねる。はしゃぐ父娘を眺めながら、実は自分は自転車に乗れないのだと打ち明ける。
松本穂香吉村美里役
町役場で移住者を支える職員。迅に好意を寄せ、法廷でも彼の側に立つ。
外村紗玖良日比野空役
渚と玲奈の6歳の娘。父が大好きで、父と迅の関係を少しもおかしなことだと思わない。
鈴木慶一緒方役
近所に住む年老いた猟師。さりげなく迅を見守り、堂々と生きればいいと伝える。
この作品が問いかけるもの
この映画は、小さな町で男ふたりが子どもを育てるには何が要るのか、そしてそれがその子の母親に何を負わせるのかを描く。映画は、隠れて生きてきた迅がカミングアウトするまでを追い、村の人々が敵意ではなく、隣人としてのあたりまえの良識で応える姿を映す。親権裁判は、ゲイの父親に娘を育てる資格があるのかを露骨に問い、そしてその問いを裏返す。裁かれているのは、妻に対する渚自身の身勝手でもあるのだ。渚は妻に謝ることで裁判を終わらせる。ふたりの初恋を描いたテレビドラマの続編にあたり、宮沢氷魚はこの作品で複数の新人賞を受けた。子どもを愛する人たちが、もう互いを愛していないとき、家族とは何なのか。その問いを、映画は優しく開いたまま残す。