さよなら歌舞伎町
Kabukicho Love Hotel
ストーリー
結末まで書いています。
歌舞伎町のラブホテルの一日。支配人、恋人、韓国人デリヘル嬢、刑事。
高橋徹は、一流ホテルで働いていると家族にも恋人にも偽っている。実際には歌舞伎町のラブホテル「ホテル・アトラス」の店長で、映画はそこでの一日を追う。アダルトビデオの撮影隊が入った部屋へピザを届けた徹は、出演者のなかに妹の美優を見つける。故郷の塩竈で保育士を目指していた美優は、東日本大震災で実家の工場がつぶれたあと、東京でこの仕事に就いたのだった。撮影のあと、最初の相手もカメラの前だったのかと徹が聞くと、美優は首を横に振り、ふたりのわだかまりは解けていく。同棲中の恋人で、メジャー・デビューを目指す歌手の沙耶は、音楽プロデューサーの竹中とホテルに入り、部屋の前で徹と言い争ったあと、竹中と関係を持つ。
従業員の里美は、駆け落ちした康夫を何年も部屋に匿っている。ふたりは傷害事件で指名手配されていて、今夜0時に時効を迎える。同僚と連れ立ってホテルを訪れた、夫のいる刑事が里美に気づいて部屋に引き留めるが、里美は康夫にひとりで逃げてと電話し、非常ベルが鳴った隙に逃げ出す。不法残留の韓国人女性ヘナは、帰国してブティックを開くため、コールガールとしての最後の日を迎えていた。目隠しをさせた客に浴槽で体を洗われるうち、ヘナはその男が恋人のチョンスだと気づく。泣いて謝るヘナに、チョンスは自分も女性客から金を受け取って関係を持ったと打ち明ける。互いの嘘を許し合ったふたりは、結婚して一緒に韓国へ帰ろうと決める。風俗のスカウトの正也は、家出少女の雛子の身の上を聞き、組織から足を洗うために出ていく。暴行を受けて戻った彼は、山盛りのチキンナゲットという彼女の夢をかなえに、雛子を連れ出す。
客に振り回された徹は、ついに自ら非常ベルを押し、胸にためていた思いをぶちまけて、自転車で夜の街へ走り出す。その自転車を譲られた里美は康夫と落ち合い、ビルの電光掲示板が0時を告げると、ふたりは抱き合う。夜明けの神社で、徹は迎えに来た沙耶を振り返りもせずに去り、ひとり部屋に戻った沙耶は、ギターを弾いて歌いながら涙をこぼす。徹は故郷の塩竈へ向かうバスに乗る。同じバスには美優も乗っているが、ふたりは互いに気づかない。
主な出演
染谷将太高橋徹役
一流ホテルで働いていると家族や恋人に偽っている、ラブホテルの店長。
高橋徹の物語
徹の嘘は、ホテル・アトラスでの一日のうちにほどけていく。アダルトビデオの撮影部屋にピザを届けると、出演者のなかに妹の美優がいる。撮影のあと、最初の相手もカメラの前だったのかと聞き、美優が首を横に振ると、ふたりのわだかまりは解けていく。夜には恋人の沙耶が音楽プロデューサーとホテルに現れ、徹の本当の仕事を知って廊下で彼と言い争ったあと、プロデューサーと関係を持つ。客に振り回された徹はついに自ら非常ベルを押し、胸にためていた思いをぶちまけて自転車で飛び出し、その自転車を里美に譲る。夜明けの神社で、迎えに来た沙耶を振り返りもせずに去り、故郷の塩竈へ向かうバスに乗る。同じバスには美優も乗っているが、ふたりは互いに気づかない。
前田敦子飯島沙耶役
徹と同棲する恋人。歌手としてメジャー・デビューを目指している。
飯島沙耶の物語
沙耶は、恋人の徹が一流ホテルで働いていると信じている。その夜、メジャー・デビューを懸けて音楽プロデューサーの竹中とホテル・アトラスに入り、徹がラブホテルの店長だと知る。嘘をついていたことにも、自分を止めないことにも腹を立て、廊下で徹と言い争う。迷ったすえ、帰りかけた竹中と自分から関係を持つ。竹中は、あまり無理するなよと言い残して部屋を出ていく。非常ベルの騒ぎのなかで、徹は彼女に別れを告げて飛び出していく。夜明けの神社で徹を見つけ、帰ろうと声をかけるが、徹は振り返りもせずに去る。ひとり部屋に戻った沙耶は、ギターを弾きながら歌ううちに、涙が止まらなくなる。
イ・ウンウイ・ヘナ役
不法残留のまま働く韓国人のコールガール。帰国を前に、最後の仕事の日を迎える。
イ・ヘナの物語
ヘナは韓国でブティックを開く資金を貯め終え、近く帰国するつもりでいる。恋人のチョンスは、自分の店の資金がまだ貯まらないから一緒には帰れないと言う。そのチョンスは、眠っている彼女のバッグから、コールガールとしての名刺を見つけていた。日本での最後の出勤日、ホテル・アトラスで客に目隠しをさせられ、浴槽で体を洗われるうちに、ヘナはその男がチョンスだと気づく。泣いて謝る彼女に、チョンスは、自分も女性客から金を受け取って関係を持っていたと打ち明ける。ふたりは互いの嘘を許し合い、帰り道でチョンスはプロポーズする。ふたりは一緒に韓国へ帰ることにする。
ロイアン・チョンス役
ヘナの恋人。朝鮮料理店で働き、蕎麦と日本酒の店を開くために金を貯めているが、彼にも秘密がある。
南果歩鈴木里美役
指名手配中の恋人を匿いながら働くホテルの従業員。時効成立までの時間を数えている。
鈴木里美の物語
里美と康夫は、15年にわたって逃げ続けてきた。ふたりが指名手配されている傷害事件は、今夜0時に時効を迎える。その夜、夫のいる刑事が同僚とホテル・アトラスに入り、寿司を届けに来た里美に気づいて部屋に引き留める。里美はトイレにこもって康夫にひとりで逃げてと電話し、携帯電話を壊す。非常ベルが鳴った隙に、刑事を振り切って逃げ出す。大通りで徹から自転車を譲られ、礼を言って走り去り、康夫と落ち合う。ビルの電光掲示板が0時を告げると、ふたりは抱き合って喜ぶ。
松重豊池沢康夫役
里美と駆け落ちした男。里美の部屋に身を潜め、0時を待っている。
この作品が問いかけるもの
『さよなら歌舞伎町』は、名前も知らないまま体を重ねるための建物で一日を過ごし、そこにいるほとんど誰もが、愛する誰かに嘘をついていることを見いだす。仕事について、過去について、金のためにしていることについて。荒井晴彦と中野太の脚本を得た廣木隆一監督は、性を売ることも、見返りのために体を差し出すことも、蔑まず美化もせず、人が生き延びるための手段として描く。物語の背後には東日本大震災があり、美優は塩竈の実家の工場を失って、東京でアダルトビデオの仕事に就いた。浴室で韓国人の恋人たちが互いの秘密を打ち明ける場面は、ある批評家に本作でもっとも感動的だと評された。残るのは、愛は真実に耐えられるのかという穏やかな問いと、部屋ごとに違うその答えだ。