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Cinema 月明かりの映画館

彼女の人生は間違いじゃない

Side Job.

2017映画日本

465作品の星図のなかで見る

ストーリー

結末まで書いています。

平日は福島の役所、週末は東京でデリヘル。震災後の彼女の人生。

震災から五年。金沢みゆきは、福島県いわき市の仮設住宅で父の修と暮らしている。母は津波にさらわれ、遺体はまだ見つかっていない。農家だった修は土壌汚染で畑を失い、補償金でパチンコに通い、夜は酒を飲んで妻の思い出を語るばかりだ。みゆきは平日は市役所で働き、週末になると高速バスで東京へ向かう。駅のトイレで化粧をして渋谷へ行き、「ゆき」という名でデリヘルの仕事をする。父には、東京の英会話教室に通っていると話している。彼女を面接した店の三浦が、ホテルへの送り迎えをし、客が暴力をふるったときには駆けつける。

元恋人の健太は、やり直したいと言う。震災のあと、生き残ったことの罪悪感に押しつぶされていた彼は、心ない一言で彼女を傷つけたのだった。仮設住宅で待っていた健太をホテルに連れていったみゆきは、自分の仕事のことを打ち明ける。それでも彼は彼女を求める。無理なのは自分のほうだと気づいたみゆきは、別れを告げて帰る。同僚の新田は、東京から来た学生に震災のことを尋ねられて答えられない。家族は無事だったが、父の工場は津波に流され、家族はばらばらになった。震災前からこの土地を撮ってきた写真家の沙緒里とともに、新田とみゆきは、失われた風景の写真展を開く。みゆきに怒りをぶつけられた修は、パチンコを早めに切り上げた日、原発で働く夫をもつ隣人の女性が自ら命を絶とうとするのを止め、それから酒をやめる。

やがて修は一時立ち入りの許可を得て、震災後初めて立ち入り制限区域の自宅を訪れ、妻の服を集める。知り合いの漁師の船で沖へ出ると、寒くないようにと服を海へ投げ入れる。渋谷では、三浦が俳優の仕事に打ち込むために店を辞めていた。みゆきは彼の舞台を観て、笑顔で帰路につく。いわきに戻った彼女は子犬を買い、捨てられていたのを拾ったと父に話す。修は子犬を腕に抱く。三浦からは双子が生まれたという写真が届き、修はふたたび畑を耕し始める。

主な出演

  • 瀧内公美金沢みゆき役

    いわき市役所の職員。津波で母を亡くし、週末は誰にも告げずに東京のデリヘルで働いている。

    金沢みゆきの物語

    みゆきは平日はいわき市役所で働き、週末は高速バスで東京へ向かう。駅のトイレで化粧をし、渋谷のデリヘルで「ゆき」として働いて二年になる。父には英会話教室に通っていると話している。客に殴られれば、送迎役の三浦が駆けつける。震災のあと心ない一言で彼女を傷つけた元恋人の健太がやり直したいと言うと、ホテルに連れていって仕事のことを打ち明け、それでも求めてくる彼を前に、無理なのは自分のほうだと気づいて別れを告げる。補償金をパチンコに注ぎ込む父に怒りをぶつけ、同僚の新田と、失われた風景の写真展を開く。三浦が俳優の仕事に専念するため店を辞めると、彼の舞台を観て、笑顔で帰路につく。いわきに戻ると子犬を買い、捨てられていたのを拾ったと父に話す。

  • 光石研金沢修役

    みゆきの父。津波で妻を、汚染で畑を失い、パチンコと酒に日々をやり過ごしている。

    金沢修の物語

    修は農家だったが、原発事故の汚染で畑を失い、津波で妻を失った。妻の遺体はまだ見つからない。仮設住宅で娘のみゆきと暮らし、補償金をパチンコに注ぎ込み、夜は酒を飲んで妻の思い出を語る。娘の言葉が引っかかり、パチンコを早めに切り上げて帰った日、原発で働く夫をもつ隣人の女性が自ら命を絶とうとしているのに出くわし、それを止める。それから酒をやめる。やがて一時立ち入りの許可を得て、震災後初めて立ち入り制限区域の自宅に入り、妻の服を集めると、知り合いの漁師の船で沖へ出て、寒かったろうと叫びながら服を海へ投げ入れる。みゆきが連れ帰った子犬を咎めもせずに抱き、ふたたび畑を耕し始める。

  • 高良健吾三浦秀明役

    渋谷の店で送迎と用心棒を務める男。みゆきを見守りながら、演劇の世界にも生きている。

  • 柄本時生新田勇人役

    市役所でのみゆきの同僚。家族は震災を生き延びたが、その後ばらばらになってしまった。

  • 篠原篤山本健太役

    みゆきの元恋人。生き残った罪悪感にさいなまれ、心ない一言で彼女を傷つけたが、やり直したいと願う。

この作品が問いかけるもの

『彼女の人生は間違いじゃない』が描くのは、公式の報告には載らない復興の一面だ。震災と津波と原発事故から五年、いわきの若い市職員は、平日はほかの人々の暮らしの再建を手伝い、週末は渋谷で身体を売る。映画はそれを醜聞とも、救いを求める叫びとも扱わず、行き場のない悲しみを抱えるひとつのやり方として描く。彼女の周りには、もっと静かな傷がある。パチンコに消える補償金、周囲から冷たい目を向けられる原発作業員の家族、宗教にのめり込んでばらばらになった家族、許可がなければ帰れない家。福島県郡山市生まれの廣木隆一が、自らの初めての小説を映画にした。脚本家で監督の荒井晴彦は、震災に寄りかかりすぎていると評した。最後に映画が差し出すのは、小さく確かなものだ。冷たい海に妻の服を投げ入れる父。子犬を連れて帰る娘。