スキャンダル
The Scandal
ストーリー
結末まで書いています。
18世紀の朝鮮。貴婦人は遊び人のいとこに、貞節を誓った若い未亡人を落とせたら身を許すと賭けを持ちかける。『危険な関係』の翻案。
十八世紀の朝鮮。チョ夫人ことチョ・ユンは、並外れた知性を持ちながら、それを生かす場所をどこにも持たない。夫は跡継ぎを得るため、若いソオクを妾に迎えようとしている。チョ夫人は、若い頃から自分を想い続けてきたいとこで、都随一の遊び人として知られる文人チョ・ウォンに賭けを持ちかける。会ったこともない亡き夫のために生涯の貞節を誓った若い未亡人アン・ヒヨンを落とせたら、ついに彼に身を許す。落とせなければ、ソオクを身ごもらせること。
かつてふたりは、舟で駆け落ちする約束をしていた。だがユンは、娘に生まれたことを嘆いて泣く父の姿を見て家に残り、いまの夫に嫁いだ。ウォンは明け方まで渡し場で待ち続けた。そのウォンが、虚栄心ではなく悲しみのほうからヒヨンに近づくうち、賭けは賭けでなくなっていく。ひそかに天主教の集まりに通うヒヨンは彼を信じるようになり、彼もまた彼女を求めはじめる。ヒヨンが婚家を抜け出して彼のもとへ身を寄せると、左議政の家は、彼女が貞節のために命を絶ったものと思い込む。ヒヨンの姑はチョ夫人に、烈女の門を賜るよう王へ願い出てほしいと迫る。王はウォンに亡骸を探せと命じ、夫人は、ヒヨンに本当に死んでもらえばいいと言う。
ウォンはヒヨンと燕京へ逃れる手はずを整えながら、ユンにも共に逃げるとほのめかす。男装したヒヨンはチョ夫人の屋敷を訪ね、彼に王を欺かせないでほしいと頼む。そこへウォンが現れ、ユンは彼にどちらかを選ばせる。本当に愛しているのはユンだと彼は言う。そのあとヒヨンを探し出し、賭けのすべてを打ち明ける。ヒヨンは、この憎しみを支えに生きていくと告げて去る。偽りの死亡報告を受けて王は烈女の門を許すが、ひそかにウォンを呼び、報告の嘘は見抜いていると告げて、二度と顔を見せるなと言い渡す。ウォンは下人たちを自由の身にしてひとり旅立ち、自ら命を絶とうとする。彼が戻ることはない。
月日が流れる。自由になったチルソンとウンシルには子どもが生まれ、ヒヨンは人知れず信仰を守り続けている。ソオクは左議政の末息子インホの子を身ごもり、夫は知らないふりをする。チョ夫人は地位も屋敷も失わないまま、ひとり机に向かい、ウォンへの手紙を書いている。
主な出演
ソン・イェジンチョ夫人役
才知を生かす場を持たず、跡継ぎのための結婚に縛られた貴婦人。危険な賭けを言い出す。
チョ夫人の物語
若い頃、チョ夫人はいとこのチョ・ウォンと駆け落ちするはずだったが、娘に生まれたことを嘆いて泣く父を見て家に残った。いま、夫が跡継ぎのために妾を迎えようとするなか、彼女はウォンに賭けを持ちかける。彼が誘惑した未亡人が死んだと思われると、烈女の門を王に願い出て、ヒヨンには本当に死んでもらえばいいと言い、偽りの死亡報告を書く。選べと迫られたウォンは愛しているのは夫人だと答えるが、そのままヒヨンのもとへ向かい、夫人は衣装を引き裂く。王が涙したと伝える手紙を最後に、彼は戻らない。地位も屋敷も手放さないまま、彼女はひとり机に向かい、一緒に行かなかったことを悔やむ手紙を書き続ける。
チ・チャンウクチョ・ウォン役
チョ夫人のいとこで、名うての遊び人の文人。若い頃から彼女を想い続け、賭けに乗る。
チョ・ウォンの物語
いとこのユンが駆け落ちの約束を捨てて嫁いだ日、チョ・ウォンは明け方まで渡し場で待ち続けた。いまユンの賭けに乗り、悲しみのほうから未亡人ヒヨンに近づくが、賭けはやがて賭けでなくなる。王に亡骸を探せと命じられると、ふたりで燕京へ渡る舟を用意する。だがユンの屋敷で選べと迫られ、愛しているのはユンだと答える。そのあとヒヨンに賭けのことを打ち明け、生きてくれと頼む。偽りの死亡報告は王に見抜かれ、二度と顔を見せるなと告げられる。下人たちを自由にしてひとり旅立った彼は、船頭になぜ戻れないのかと問われ、誰のもとへ戻るのかと答える。そして自ら命を絶とうとし、それきり姿を消す。
ナナアン・ヒヨン役
会ったこともない亡き夫に貞節を誓った若い未亡人。ひそかに天主教を信仰している。
アン・ヒヨンの物語
会ったこともない夫を悼むヒヨンに、ウォンは悲しみのほうから近づく。彼を信じ、やがて愛した彼女は、婚家を抜け出して彼のもとへ行く。婚家は貞節のために命を絶ったと思い込むが、ひそかに通う天主教の教えから、彼女は自ら命を絶つことを罪と考え、生きたいと願っている。王がウォンに亡骸を探せと命じると、一緒に逃げてほしいと頼み、男装してチョ夫人を訪ね、彼に王を欺かせないでと願う。だがその場でウォンは、愛しているのは夫人だと言う。賭けのすべてを打ち明けられると、この憎しみを支えに生きていくと告げる。死んだものとされ、烈女の門まで建てられた彼女は、人知れず信仰を守り、ウォンを育てた老女のいる彼の屋敷に身を寄せる。
ハン・ソナプニ役
ソオクの母。金と地位に貪欲で、淫らな絵を広めてウォンを陥れようとする。
カン・チャニクォン・インホ役
左議政の末息子で、ヒヨンの義弟。ソオクと人目を忍ぶ関係になる。
シン・ユナソオク役
跡継ぎを産むため、チョ夫人の夫の妾として家に迎えられる若い娘。
この作品が問いかけるもの
『スキャンダル』は、遊びとして誘惑を重ねる貴族たちを描いたフランスの小説『危険な関係』を、2003年の映画と同じく儒教の朝鮮王朝へ移した。その移植によって、古いゲームに本物の壁が立ち上がる。チョ夫人の残酷さは、才知を使う場もなく、跡継ぎのためだけにある結婚に閉じ込められたところから生まれている。標的にされる未亡人は、貞節のために死んだ女性に門を賜るという時代の名誉に絡め取られ、家も朝廷も、生きた彼女より烈女の門を欲しがる。物語の端で恋をし、自由を得る下人たちだけが、いちばん幸せな顔で終わる。残されるのは衣装の下の問いだ。力比べとして弄ばれた欲望は、愛に戻れるのか。駒にされた人々は何を失うのか。