アドレセンス
Adolescence
ストーリー
結末まで書いています。
13歳の少年が同級生殺害で逮捕される。インセル文化と絵文字と父親をめぐる、ワンカット4話。
五月のある朝、北イングランドの町に暮らすミラー家に、武装した警官隊がドアを破って踏み込む。殺人の容疑で連行されるのは、13歳の息子ジェイミーだった。配管工の父エディは付添人として、身体検査にも取り調べにも息子の隣に座る。ジェイミーは泣きながら、何もしていないと言う。バスコム警部補とフランク巡査部長は、彼がインスタグラムに書いた性的なコメントと、前夜に駐車場で殺された同級生ケイティ・レナードについて問いただし、最後に防犯カメラの映像を再生する。彼女を殺しているのは、ジェイミーだった。
三日後、刑事たちは荒れた中学校を訪ね、動機を探る。同じ学校に通うバスコムの息子アダムが、ケイティがジェイミーの投稿に残した絵文字の意味を父に説明する。彼女はジェイミーを「インセル」と呼んでいた。ジェイミーの友人ライアンは窓から逃げ出すが、捕まると、ケイティを脅すだけだと思ってジェイミーに武器を持たせたのは自分だと認め、逮捕される。
七か月後、法廷心理学者ブリオニー・アリストンが、少年の収容施設にいるジェイミーと裁判前の面談をする。彼は親しげになったかと思うと、突然荒れる。そして語る。ケイティは私的な写真を同意なく学校中に回されるという虐待を受け、深く傷ついていた。弱っている今なら応じると思って交際を申し込んだが、断られ、ネットで嘲られた。武器を持っていったのは脅すためだけだった、と。最後の面談だと告げられたジェイミーは、僕のことが好きかと迫り、答えない彼女の前から叫びながら引きずり出されていく。ひとり残ったブリオニーは泣き崩れる。
事件から十三か月後、エディの50歳の誕生日。仕事のバンには中傷の落書き。ペンキを買った店の外で、犯人と思う少年たちに詰め寄り、怒りのままそのペンキをバンに浴びせる。帰り道、ジェイミーから誕生日を祝う電話がかかり、有罪を認めるつもりだと告げられる。その夜エディは妻マンダに、父に殴られて育ち、あんな父親にはなるまいと誓ったと語る。マンダは、夜遅くまでパソコンに向かう息子を、部屋にいるのだから安全だと思っていたと悔やむ。一家は引っ越さないと決め、出前を取って家で映画を観ることにする。ひとりジェイミーの部屋に入ったエディは泣き崩れ、ベッドのぬいぐるみに布団をかけ、もっといい父親でいられなかったことを息子に詫びる。
主な出演
オーウェン・クーパージェイミー・ミラー役
同じクラスの少女を殺害した容疑で逮捕される13歳の少年。はじめは何もしていないと言い張る。
ジェイミー・ミラーの物語
ジェイミーは13歳。ある朝、武装した警官隊が家に踏み込み、彼を連行する。警察署では泣きながら、何もしていないと父に言い張るが、刑事たちはケイティを殺す彼の姿を映した映像を再生する。七か月後、少年の収容施設で、心理学者ブリオニーとの最後の面談に臨む。礼儀正しかったかと思えば得意げになり、やがて激高してメモを見せろと迫り、椅子を投げ、指図するなと怒鳴る。ケイティは好みじゃなかった、誘ったら笑われた、武器は脅すためだけだった、と彼は語る。これが最後だと告げられると、僕のことが好きかとすがるように問い、そのまま引きずり出されていく。事件から十三か月後、父の誕生日に電話をかけ、少しためらってから、有罪を認めると告げる。
スティーヴン・グレアムエディ・ミラー役
ジェイミーの父で配管工。取り調べに付き添い、自分が何を見落としたのかを問い続ける。
エディ・ミラーの物語
武装した警官隊が玄関を破って踏み込んできた朝、エディはジェイミーの付添人を引き受け、やったのかと尋ね、息子の否定を信じる。だが刑事たちが再生した映像には、ケイティを殺す息子が映っている。すがりつく息子から一瞬身を引き、それから強く抱きしめる。三日後、ケイティが殺された場所に花を手向ける。十三か月後の50歳の誕生日、バンには小児性愛者をののしる落書き。犯人と思う少年たちを脅し、ペンキをバンに浴びせ、帰り道、有罪を認めるという息子の電話を受ける。その夜、自分も父親に殴られて育ち、あんな父親にはなるまいと誓ったとマンダに語る。息子の部屋でひとり泣き、ぬいぐるみに布団をかけ、もっといい父親でいられなくてすまないと詫びる。
エリン・ドハーティブリオニー・アリストン役
裁判を前に、収容中のジェイミーと面談して彼を評価する法廷心理学者。
ブリオニー・アリストンの物語
事件から七か月後、ブリオニーは少年の収容施設を訪ね、ジェイミーとの五回目の面談に臨む。家から持ってきたマシュマロ入りのホットチョコレートと、サンドイッチの半分を差し出し、家族の話から、父親のこと、男らしさのこと、女性をどう思うか、ケイティが彼の投稿に残したコメントへと、慎重に進んでいく。彼は愛想よくなったかと思えば見下し、メモを見せろと迫り、だまそうとしていると責めて椅子を投げる。それでも彼女は声の調子を変えずに問いを重ね、これが最後の面談だと告げる。僕のことが好きかと迫る彼に、彼女は答えない。叫びながら引きずり出されていく彼を見送ったあと、ひとりになった彼女は泣き崩れ、やがて気持ちを立て直して部屋を出る。
アシュリー・ウォルターズルーク・バスコム役
事件を率いる警部補。ジェイミーと同じ学校に通う息子から、子どもたちの言葉の意味を教わる。
クリスティン・トレマルコマンダ・ミラー役
ジェイミーの母。家族を支えながら、息子の部屋の閉じた扉を信じていた自分を責める。
この作品が問いかけるもの
『アドレセンス』は、愛情のある家庭で育った13歳の少年が、なぜ同じクラスの少女を殺したのかを問う。ひどい家庭や怪物のような子どもという、わかりやすい答えには逃げない。スティーヴン・グレアムは、イギリスで少年が少女の命を奪う事件が相次いだことからこの物語を着想し、共同脚本のジャック・ソーンは、現代の男性の怒りを正面から見つめたかったと語っている。マノスフィア、インセルの言葉、大人には読めない絵文字の符丁。各話はワンカットで撮られ、カメラは目をそらさない。配信から間もなく、スターマー首相は議会と学校での上映を求める声を支持し、本作はイギリスの中等学校で無料で観られるようになった。残る問いは、エディが息子の部屋に抱えていくものと同じだ。あの扉の向こうで何が起きていたのか。それに気づける人はいたのか。