アニー・ホール
Annie Hall
ストーリー
結末まで書いています。
ニューヨークの喜劇人が、アニーとの恋がなぜ終わったのかを振り返るラブコメ。監督こそが今では難しい話題。
ニューヨークの喜劇人アルビー・シンガーは、カメラに向かって語りかける。一年前に終わったアニー・ホールとの関係が、なぜ終わったのかを考えているのだと。ブルックリンで育った少年時代、存在の虚しさを口にして母親を困らせたこと。自分に関心を寄せてくれるというだけで相手を軽んじてしまった最初の結婚。スポーツに興味のない作家との二度めの結婚。
アニーとは、友人たちとのテニスのダブルスで出会った。試合のあと、彼女は彼を車で送り、バルコニーでワインをふるまう。ぎこちない世間話の本音が、字幕で重なって映し出される。初めてのデートは、クラブ歌手を目指す彼女のオーディションのあと。ロブスターを料理しながら、ふたりは笑いが止まらない。アニーは愛していると言い、アルビーは死についての本を彼女に買い与え、この気持ちは愛以上だと言う。一緒に暮らし始めると空気は張りつめる。彼女が社会人講座の教師と腕を組んでいるのを見たアルビーは、ふたりで決めたはずの自由をめぐって言い争い、ふたりは別れる。彼は街ゆく人に愛とは何かを尋ね、アニメになった自分が『白雪姫』の悪い女王の姿のアニーと言い合う場面まで思い描く。
ほかの女性とのデートはうまくいかない。夜中に、浴室の蜘蛛を退治しに来てとアニーから電話があり、ふたりはよりを戻して、何があっても一緒にいると誓う。けれど、それぞれの精神分析医の前で語る言葉は、埋めようのない溝を映し出す。アルビーがテレビで賞のプレゼンターを務めることになり、友人のロブと三人でロサンゼルスへ行く。その帰り道、ふたりはこの関係はうまくいっていないと認め合う。アニーはカリフォルニアのレコード・プロデューサー、トニー・レイシーのもとへ去る。アルビーは求婚するが、断られる。ニューヨークに戻った彼は、ふたりの物語を芝居にして、結末だけを書き換える。舞台の上の彼女は、求婚を受け入れる。
のちに、それぞれ新しい相手のいるふたりは、アッパー・ウエスト・サイドでもう一度だけ会う。恋愛は不合理で、どうかしていて、ばかげている。それでも人は、必要だから恋をしつづけるのだ。アルビーはそう結論づける。
主な出演
ウディ・アレンアルビー・シンガー役
死のことばかり考える神経質なニューヨークの喜劇人。二度の離婚を経て、アニーとの恋がなぜ終わったのかを考え続ける。
アルビー・シンガーの物語
アルビーはブルックリンの少年時代、宇宙は膨張していると言って宿題をしない子だった。二度の結婚でも幸せにはなれなかった。アニーといる間はしばらく幸せで、死についての本を買い与え、精神分析の費用を払い、大学の講座に通えと勧める。ところが彼女が変わりはじめると、君の進歩が僕の進歩をつぶしていると愚痴をこぼす。講座の教師にも、トニー・レイシーにも嫉妬する。ロサンゼルスでは体調を崩して何もかもけなし、帰りの機内でふたりは終わりを認める。やがて恋しくなって西へ飛び、求婚して断られ、レンタカーをぶつけて留置される。ふたりのことを芝居にして結末を幸せに書き換え、のちに新しい相手のいる彼女とまた会って、人は必要だから恋をしつづけるのだと考える。
ダイアン・キートンアニー・ホール役
クラブ歌手を目指す女性。アルビーと恋に落ち、ふたりの暮らしの外へと育っていき、やがてカリフォルニアへ向かう。
アニー・ホールの物語
アルビーと出会ったころのアニーは、自信がなく、バルコニーでぎこちなくしゃべり、初めてのオーディションでは震える声で歌う。彼に本を与えられ、精神分析に通い、大学の講座で学ぶうちに、堂々と歌えるようになり、新しいことを試したがるようになる。その歌がレコード・プロデューサーのトニー・レイシーの耳にとまり、ロサンゼルスへの旅で、彼女は西海岸が気に入る。アルビーと別れを認め合うと、トニーと暮らすためにカリフォルニアへ移る。求婚しに来たアルビーを断り、あなたのおかげで部屋から出て歌えるようになったと言いながら、あなたは人生を楽しめない人だと告げる。のちにニューヨークへ戻り、別の男性と暮らす彼女は、アルビーともう一度会い、昔話をして別れる。
トニー・ロバーツロブ役
アルビーの親友で、ロサンゼルスでテレビ番組に出ている俳優。アルビーとアニーの西海岸行きに同行する。
ポール・サイモントニー・レイシー役
ロサンゼルスのレコード・プロデューサー。アニーに目をかけ、彼女はアルビーのもとを離れて彼のもとへ行く。
この作品が問いかけるもの
『アニー・ホール』は、愛が終わった理由を、失った当人が語る喜劇だ。しかもその語りは、問題の多くが自分にあることを隠さないほど正直である。アルビーは何ごとも長くは楽しめない。当初の仮題は、まさにその状態、快感を感じられないことを指す精神医学の用語だった。一方のアニーは変わっていく。歌い、学び、自分の頭で考えるようになり、やがて彼とは分かち合えない暮らしへ出ていく。映画は彼女を、彼の物語の悪役にしないまま送り出す。アカデミー賞では作品賞、ダイアン・キートンの主演女優賞を含む4部門を受賞した。