危険な関係
Dangerous Liaisons
ストーリー
結末まで書いています。
二人の貴族が貞淑な妻の誘惑に賭ける。同じラクロの小説は、のちに『クルーエル・インテンションズ』や『スキャンダル』にもなった。
革命前夜のパリ。未亡人のメルトゥイユ侯爵夫人は、愛人のバスティード伯爵に捨てられた。恥をかかせるために彼女が狙うのは、伯爵の婚約者で、修道院を出たばかりの年若いセシルだ。婚礼の前にこの娘を誘惑させ、辱めようというのである。役目を持ちかけられたのは、かつての恋人で、彼女に劣らず無節操なヴァルモン子爵。だが子爵は断る。いま夢中なのは、叔母ロズモンド夫人の屋敷に滞在している貞淑なトゥールベル夫人で、その夫はブルゴーニュで裁判を取り仕切るため家を空けている。侯爵夫人は賭けを持ちかける。トゥールベル夫人を落とし、その証拠の手紙を持ってきたら、自分が一夜をともにしよう。
トゥールベル夫人はなびかない。子爵は従者に夫人の小間使いを誘惑させて手紙を盗み読み、セシルの母ボランジュ夫人が自分の悪評を吹き込んでいたことを知る。その仕返しに、彼は侯爵夫人の計画に乗る。セシルは音楽教師の騎士ダンスニーに恋をしているが、身分も財産も足りない彼との結婚は許されない。侯爵夫人はその恋をあおる。子爵は口実を設けてセシルの寝室に入り込み、脅して抵抗を封じ、性的に暴行する。セシルが頼った侯爵夫人は、子爵の「手ほどき」を受け入れるよう言い含める。昼はダンスニーに言い寄られ、夜は子爵が訪れる。侯爵夫人はダンスニーを自分の愛人にする。セシルは身ごもり、流産する。
子爵はついにトゥールベル夫人を手に入れ、思いがけず本気で愛してしまう。嫉妬した侯爵夫人は彼をあざけり、夫人と別れなければ約束は守らないと言う。子爵は侯爵夫人の用意した言葉、自分にはどうにもならない、とだけ告げて夫人を捨てる。夫人は修道院に身を寄せ、重い病に伏す。それでも約束を拒む侯爵夫人は子爵に「戦争」を宣言し、ダンスニーにセシルと子爵の関係を明かす。決闘で、子爵はわざとダンスニーに討たれる。死の間際、彼はトゥールベル夫人への本当の思いを伝えてほしいと頼み、侯爵夫人の手紙の束を託して公にさせる。伝言を聞いた夫人は、ほどなく息を引き取る。オペラ座で、侯爵夫人はかつての取り巻きたちの罵声を浴び、桟敷を後にする。ひとり鏡の前で、彼女は化粧を落とす。
主な出演
グレン・クローズメルトゥイユ侯爵夫人役
誘惑と秘密で社交界を操る未亡人の侯爵夫人。自分を捨てた愛人への復讐をたくらむ。
メルトゥイユ侯爵夫人の物語
メルトゥイユ侯爵夫人は若いころから本心を隠して生きてきた。自分を捨てた伯爵への仕返しに、その婚約者セシルを婚礼前に誘惑させようとし、ヴァルモン子爵と賭けをする。トゥールベル夫人を落として証拠を持ってくれば、一夜をともにしよう。セシルには味方の顔でダンスニーとの恋をあおり、手紙の隠し場所を母親に教える。子爵がセシルを暴行したあとは、彼の「手ほどき」を受け入れよと諭し、ダンスニーを愛人にする。子爵の本気の恋を見抜くとあざけり、夫人と別れなければ約束は守らないと言う。子爵が従っても拒み、戦争を宣言して、ダンスニーにセシルのことを明かす。子爵が死ぬと、打ちのめされる。手紙が公にされ、オペラ座で罵声を浴びた彼女は、ひとり鏡の前で化粧を落とす。
ジョン・マルコヴィッチヴァルモン子爵役
侯爵夫人のかつての恋人で、誘惑を遊戯として楽しむ放蕩者。陥れるはずの女性を本気で愛してしまう。
ヴァルモン子爵の物語
ヴァルモン子爵は、小娘を落とすなど簡単すぎると侯爵夫人の話を断る。狙うのは、貞淑で知られるトゥールベル夫人だ。夫人の見張りに気づきながら、貧しい男の借金を肩代わりしてみせ、従者に小間使いを誘惑させて夫人の手紙を盗み読む。セシルの母が悪評を吹き込んでいたと知ると、仕返しに、口実を設けてセシルの寝室に入り込み、性的に暴行する。やがて夫人を手に入れ、本気で愛していることに気づく。侯爵夫人にあざけられ、その気持ちを恥じて、自分にはどうにもならない、という彼女の用意した言葉で夫人を捨てる。それでも約束は拒まれ、二人は戦争に入る。ダンスニーとの決闘で自ら討たれ、息を引き取る前に、夫人への愛を託し、侯爵夫人を破滅させる手紙をダンスニーに渡す。
ミシェル・ファイファートゥールベル夫人役
ヴァルモンの叔母の屋敷に滞在する、信仰深く貞淑な人妻。できるかぎり彼に抗おうとする。
トゥールベル夫人の物語
トゥールベル夫人の夫はブルゴーニュで裁判を取り仕切っていて、彼女は子爵が屋敷に来る前から、その悪評を聞かされている。村での慈善の話には心を動かされるが、愛を告げられると屋敷を去ってほしいと頼み、差し出せるのは友情だけだと言う。雨の夜、心の平安のために出ていってと懇願しながら、ベッドへ運ばれるのを拒みきれない。彼が立ち去ったその夜、自分が彼を愛していると認めた夫人は、屋敷を発つ。追ってきた子爵に、ついに身をゆだねる。まもなく彼は、もう飽きた、自分にはどうにもならないと告げて去る。夫人は修道院に身を寄せて重い病に伏し、ダンスニーから子爵の最期の言葉を伝えられて、息を引き取る。
ユマ・サーマンセシル役
修道院を出たばかりの年若い娘。バスティード伯爵の婚約者で、ダンスニーに恋している。
キアヌ・リーブスダンスニー役
セシルの音楽教師。財産のない若い騎士で、セシルを愛し、侯爵夫人に利用される。
スージー・カーツボランジュ夫人役
セシルの母で、侯爵夫人のいとこ。トゥールベル夫人に子爵の悪評を伝え、侯爵夫人を信じきっている。
この作品が問いかけるもの
『危険な関係』は、退屈し、頭が切れ、身分に守られた人々が、性を武器として使う物語だ。女をこれほど見下す社会では、女は手に入るものを奪うしかない。侯爵夫人がセシルに説くこの理屈を、映画は本物の不満として描き、同じ場面で、それを押しつけられた少女が払う代償も見せる。彼女は暴行され、そのうえでそれを受け入れろと教えられるのだ。ヴァルモンを破滅させるのは、この遊戯が決して許さないもの、自分で選んだのではない感情である。原作は1782年のラクロの書簡体小説。クリストファー・ハンプトンが自らの舞台版を脚色し、映画はアカデミー賞3部門を受賞した。その一つが彼の脚色賞だ。鏡の前でひとり化粧を落とす侯爵夫人が罰せられているのは、残酷さのためか。それとも、男の遊戯を男より巧みに戦った女だったためか。問いは開かれたまま残る。