実践 · 第五の棚
丹田呼吸 ― 下腹に息を落とす
丹田は、へその下にある、からだの重心とされる場所です。日本の武道や禅、養生の伝統は、息をそこへ落とすことを大切にしてきました。この手引きは、その伝統と、ゆっくりした呼吸について研究がわかっていることを分けたうえで、実際のやり方を説明します。
要点
- 丹田は、へその下、指三本ほどのところ。息をそこへ落とす。
- 吸うより長く吐く。1分に6回ほどのゆっくりした呼吸が、からだを鎮める。
- 一日数分から。座っても、横になっても、歩きながらでも。
この手引きは、公開されている研究や資料にもとづく一般的な情報であり、医療上の助言ではありません。医師による監修はまだ受けていません。ご自身のからだ、健康、薬、妊娠や避妊については、医師や薬剤師に相談してください。
丹田とは
伝統的には「臍下丹田」、へそから指三本ほど下、からだの内側の中心にある点とされます。武道では重心と気の中心、禅では心を落ち着ける場所です。貝原益軒は『養生訓』(1713年)で、気を下腹に集めることを養生の要としました。
解剖学的に「丹田」という器官があるわけではありません。からだの上では、下腹に息を落とすことは横隔膜を使った呼吸のことです。吸うと横隔膜が下がり、下腹がふくらみます。
研究がわかっていること
1分に6回ほどのゆっくりした呼吸は、心拍の変動が大きくなることや、くつろぎの感覚と結びついていることが、系統的なレビューで示されています。横隔膜呼吸の練習でストレスの指標が下がったという小さな試験もあります。一方、「気」についての伝統の説明は、研究が確かめる種類のものではありません。ここでは伝統として紹介します。
やり方
- 姿勢:座骨で座り、背すじを楽に伸ばして、肩を落とす。横になってもよい。
- 手をあてる:片手を、へその下、指三本ほどのところに。
- 吐くことから:口を少しすぼめて、細く長く吐き切る。お腹がゆっくりへこむ。
- 吸う:鼻から。下腹がふくらむのを手で感じる。胸はあまり動かさない。
- 数える:4つで吸い、6〜8つで吐く。およそ1分に6回になります。
- 続ける:5分から。慣れたら10〜15分。
気をつけること
めまいやふらつきを感じたら、ふつうの呼吸に戻ります。息を無理に止めないこと。ぜんそくなど呼吸の病気がある人は、医師の指示を優先してください。呼吸に注意を向けるとかえって落ち着かなくなる人もいます。そのときは目を開けて、数えることだけに集中します。
出典と、この手引きの性格
- 伝統 ある流れの中で伝えられ、その文献に記録されてきたもの。その伝統が語るとおりに紹介しています。
- 研究 臨床や実験の研究に裏づけられ、出典を末尾に示しています。
- 体験 合う人と合わない人がいるもの。約束ではなく、試してみる提案として。
- 貝原益軒『養生訓』1713年。
- 白隠慧鶴『夜船閑話』1757年。
- Zaccaro, A., Piarulli, A., Laurino, M. et al. (2018). How breath-control can change your life: a systematic review on psycho-physiological correlates of slow breathing. Frontiers in Human Neuroscience, 12, 353.
- Ma, X., Yue, Z.-Q., Gong, Z.-Q. et al. (2017). The effect of diaphragmatic breathing on attention, negative affect and stress in healthy adults. Frontiers in Psychology, 8, 874.
この手引きは、私たちが参照できた情報にもとづく一般的な内容です。医療上の助言ではなく、医師の監修を受けていません。ご自身のからだ、健康、薬については、医師に相談してください。
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