ブルカの中の口紅
Lipstick Under My Burkha
ストーリー
結末まで書いています。
ボーパールの4人の女と、彼女たちの秘密を語る官能小説。検閲委員会は“女性志向すぎる”として証明書を拒否した。
ボーパールの入り組んだ路地に建つ古い建物、ハワーイー・マンジル。そこに暮らす四人の女性は、それぞれ二重の生活を送っている。四つの物語をつなぐのは、ロージーという女を主人公にした安手の官能小説だ。それをひそかに読みふけるのが、界隈で「ブアジー」、おばさまと呼ばれる五十五歳の未亡人ウシャーである。
女子大生のレハーナーは家業の店でブルカを縫い、大学に着くとそれを脱ぐ。化粧品や服を万引きし、歌い、ジーンズ禁止に抗議するデモに加わる。若い美容師のリーラーは写真家アルシャドと関係を持ち、彼と町を出たいと願っている。だが、美術学生のヌードモデルをして暮らしを立てる母は、マノージとの縁談をまとめてしまう。三人の子の母シーリーンは、ひそかに訪問販売の仕事をしている。夫ラヒームは彼女を欲望のはけ口としか見ず、避妊を許さず、よそに女もいる。プールでいたずらされて溺れかけたウシャーは、指導員ジャスパールの水泳教室に通い始め、ロージーと名乗って彼と官能的な電話を重ねる。
秘密はひとつ残らず暴かれる。レハーナーは万引きで逮捕され、好きだった青年に去られ、父に大学をやめさせられて縁談を探される。リーラーがアルシャドとの情事を撮った映像を見つけたマノージは、婚約を破棄する。昇進が決まったその日、妻の仕事を知ったラヒームは、罰としてシーリーンをレイプし、仕事を辞めろと命じる。ロージーの正体がウシャーだと知ったジャスパールは家族に訴え、家族は近所じゅうが見守るなか、彼女の小説と水着を通りに投げ捨てる。
レハーナー、リーラー、シーリーンは、道に散らばったウシャーの持ち物を拾い集める。ウシャーはレハーナーに、あの小説の最後の数ページを読んでほしいと頼む。四人は一本のたばこを回しのむ。暮らしは壊れ、この先のことは何ひとつわからないまま。
主な出演
ラトナー・パータク・シャーウシャー・パルマール(ブアジー)役
界隈で敬われる五十五歳の未亡人。ひそかに官能小説を読み、ロージーの名で水泳の指導員に電話をかける。
ウシャー・パルマール(ブアジー)の物語
ウシャーは建物の持ち主で、界隈では信心深い年長者「ブアジー」として敬われ、よその縁談もまとめる。プールでいたずらされて溺れかけ、指導員ジャスパールに助けられて水泳を習い始める。名を名乗る場面では、ブアジーではなく、ウシャー・パルマールと口にする。水着を買い、ひそかに読みふける官能小説の主人公ロージーの名で、彼と官能的な電話を重ねる。リーラーにむだ毛の処理をしてもらい、白髪を黒く染める。だが正体を知ったジャスパールは家族に訴え、家族は近所じゅうの見守るなか、小説と水着を通りに投げ捨てる。散らばった持ち物をほかの三人と拾い集めながら、彼女はレハーナーに、あの小説の最後の数ページを読んでほしいと頼む。
コーンコナー・セーン・シャルマーシーリーン・アスラム役
三人の子の母。夫に体を支配され、裏切られながら、ひそかに販売員として働いている。
シーリーン・アスラムの物語
シーリーンはブルカをまとい、訪問販売の仕事に出る。腕がよく、会社は彼女を昇進させたがっている。家では夫ラヒームが思いのままに彼女をレイプし、避妊を許さないため、彼女はひそかに中絶を重ねてきた。医師に感染症を見つけられ、コンドームだけを使うよう言われても、夫は拒む。仕事のことを夫に話そうとするうちに夫の浮気を知り、相手の女の家までつけていって、妻だと名乗る。昇進の日、職場に現れたラヒームは冷ややかに祝いを言い、彼女を家に連れ帰って、罰としてレイプし、仕事を辞めて家にいろと命じる。最後に彼女は、通りに散らばったウシャーの持ち物を拾い集め、四人は一本のたばこを回す。
アハナー・クムラーリーラー役
恋人アルシャドとボーパールを出たいと願う若い美容師。母は別の男との縁談を進めている。
リーラーの物語
リーラーは自分の美容室を営み、旅先の婚礼を請け負う業者に、自分のメイクと恋人アルシャドの写真を売り込む。仕事でふたり一緒に世界を回るのが夢だ。美術学生のヌードモデルをして暮らしを立てる母は、ウシャーに頼んでマノージとの縁談をまとめる。婚約の日、リーラーはアルシャドと寝て、その様子を携帯電話で撮り、母に見つかる。駆け落ちしてと頼んでも、アルシャドははねつける。ディワーリーの祭りで、彼の目の前でマノージにキスして嫉妬させると、アルシャドは駆け落ちを約束するが、彼女は彼を忘れようとしてマノージに迫る。マノージは婚礼の夜まで待ちたいと言い、やがてあの映像を見つけて、婚約を破棄する。最後に彼女は、ほかの三人とたばこを回している。
プラビータ・ボルタックールレハーナー・アービディー役
家業の店でブルカを縫う女子大生。親の目の届かない場所で歌い、抗議し、万引きもする。
レハーナー・アービディーの物語
レハーナーは家業の店でブルカを縫い、それを着て大学へ行き、着いたとたんに脱ぐ。そこでは、ジーンズをはき、マイリー・サイラスを愛する歌い手だ。人気者の仲間に加わるために化粧品を、やがてショッピングモールでドレスとブーツを盗む。ジーンズ禁止への抗議デモに加わり、ドゥルヴと親しくなる。二度目のデモで逮捕されたときは、厳格な父の注意だけで済む。だがモールの防犯カメラが盗みを捉えて再び逮捕されると、ドゥルヴは離れていく。自分を仲間に引き入れたナムラターを妊娠させたのが彼だったことも知る。保釈させた父は大学をやめさせ、母に婿探しを始めさせる。最後に彼女は、ウシャーに頼まれて、あの小説の最後の数ページを読み上げる。
スシャント・シンラヒーム・アスラム役
シーリーンの夫。妻を所有物のように扱い、避妊を禁じ、働いていたことを罰する。
ヴィクラント・マシーアルシャド役
リーラーの秘密の恋人で、小さな写真館を営む。彼女と駆け落ちするかどうか、心を決めきれない。
この作品が問いかけるもの
『ブルカの中の口紅』が描くのは、ひそかにしか何かを望めない四人の女性だ。女子大生のジーンズと歌、美容師の逃げ道、妻が働くことと自分の体について決める権利、未亡人の遅れてきた欲望。秘密は見つかったとたんに罰せられ、その罰は当然のように夫や父や隣人の手に委ねられる。公開の経緯そのものが、主題の一部になった。インドの中央映画認証委員会は2017年、英紙ガーディアンの報道によれば「物語が女性本位で、空想が現実を上回っている」として認証を拒否した。上訴審判所は、女性本位であることを理由に映画を封じることはできないとして、一部削除のうえ成人向けの公開を認めた。それ以前に、作品は東京国際映画祭で「スピリット・オブ・アジア賞」を受けていた。結末に残るのはひとつだけ。一本のたばこを分け合う、四人の女性の姿だ。