慕情のアンソロジー2
Lust Stories 2
ストーリー
結末まで書いています。
結婚前に“試乗”を勧める祖母。早く帰宅した女性は、自分のベッドで抱き合う家政婦とその夫を隠れて見つめ続ける。コンコナ監督編。
四人の監督による四つの短編。シリーズ第2作。
アール・バールキ監督編。釣り合いのとれたヴェーダ(ムルナール・タークル)とアルジュン(アンガード・ベーディー)の縁談が進むなか、ヴェーダの祖母(ニーナ・グプタ)が待ったをかける。結婚の前に寝てみて、体の相性を確かめなさい、と。両親はあきれるが、ふたりは試してみる。翌朝、達しなかったと打ち明けたヴェーダに、祖母は、ふたりとも満たされるまで続けなさいと言う。やがてその日が来て、祖母は祝福し、ふたりは結婚する。
コーンコナー・セーン・シャルマー監督編。ひとり暮らしで仕事にも成功しているイシタ(ティロタマ・ショーム)は、ある日早めに帰宅し、家政婦のシーマ(アムルータ・スバーシュ)が自分の夫を招き入れ、イシタのベッドで抱き合っているのを見つける。彼女は問い詰めずに隠れて見つめ、以来、毎日の午後に帰ってきては見つめる。シーマは鏡に映る雇い主の姿に気づくが何も言わず、見られることに悦びを覚えはじめる。ついに鉢合わせしたふたりは激しく言い争い、イシタはシーマを解雇する。しばらくして買い物先で出くわしたふたりは、どちらもあの習慣から抜け出せていなかった。翌日、シーマは仕事に戻っている。
スジョイ・ゴーシュ監督編。実業家のヴィジャイ(ヴィジャイ・ヴァルマ)は車の事故を起こし、たどり着いた村で、何年も前に姿を消した最初の妻シャンティ(タマンナー・バティア)に出会う。手遅れになる前に帰って、と彼女は繰り返す。ふたりは体を重ね、ヴィジャイは、アヌと結婚し義父の会社を得るため、かつて自分が彼女を殺そうとしたと口を滑らせる。彼はシャンティを殺し、事故現場へ逃げ戻る。人々が車から引き出していたのは、彼自身の遺体だった。傍らにシャンティが現れ、ヴィジャイは自分がもう死んでいることを悟る。
アミット・ラビンデルナト・シャルマ監督編。デーヴヤニ(カジョール)の夫スーラジ(クムド・ミシュラー)は、威光も財産も失った旧王家の当主で、妻に暴力をふるい、使用人の女性をレイプする。結婚前は娼館で働いていたデーヴヤニは、その娼館でエイズウイルスに感染した若いレーカーを、新しい家政婦として雇い入れる。夫が彼女に手を出し、感染することを願って。ある夜、レーカーの部屋から男と過ごす声が聞こえる。だがスーラジは酔いつぶれて中庭に倒れていた。部屋にいたのは、デーヴヤニの息子アンクルだった。
主な出演
ニーナ・グプタダーディー役
ヴェーダの祖母。互いを満たせるかを確かめるまでは、ふたりの結婚を認めない。
ダーディーの物語
ダーディーは、亡くなるまで夫と分かち合った親密さがあったからこそ幸せな結婚だったと語り、うまくいっていない息子夫婦の結婚を戒めとして示す。ヴェーダとアルジュンの結婚式の日取りを決める席で、彼女は両家に言い渡す。まずはふたりが体の相性を確かめなさい、と。両親は仰天し、息子とその妻は彼女を避けるようになる。だがヴェーダは耳を傾ける。アルジュンは満たされたが自分は違った、と打ち明ける孫に、ダーディーは、悦びは等しく分かち合うものだと説き、富士山の噴火にたとえて、もう一度試しなさいと送り出す。やがて幸せそうなふたりが報告に来ると、彼女は結婚を祝福し、初夜のために自分の部屋を明け渡し、息子夫婦にも互いを取り戻すよう背中を押す。
ティロタマ・ショームイシタ役
ひとり暮らしの成功した女性。家政婦夫婦の情事を隠れて見ることに悦びを見いだす。
イシタの物語
ある日の午後、早く帰宅したイシタは、家政婦のシーマが自分のベッドで夫と抱き合っているのを見つける。ほかにふたりきりになれる場所のない夫婦だった。イシタは声をかけない。隠れて鏡越しにふたりを見つめ、それからは毎日、午後に早く帰ってきては見つめる。シーマは気づくが、そのまま続ける。覗きが知られると、ふたりは激しくぶつかる。イシタは恥知らずだとなじって、あなたのような人が私のベッドを使うなと言い、シーマは雇い主を変態だと責める。イシタは彼女を解雇する。数日後、買い物先で出くわしたふたりは互いに謝る。どちらもあの午後を忘れられずにいた。イシタは戻ってきてほしいと頼み、翌日、シーマは仕事に戻っている。
アムルータ・スバーシュシーマ役
イシタの家の家政婦。夫との情事を雇い主に見られていると気づき、それを楽しみはじめる。
ヴィジャイ・ヴァルマヴィジャイ役
実業家。車の事故のあと、かつて殺そうとした最初の妻と再会する。
ヴィジャイの物語
アヌと結婚し、その父の会社で要職を得たヴィジャイは、愛人とのビデオ通話に気を取られて車を木に突っ込ませる。近くの村へ歩いていった彼は、何年も前に姿を消した最初の妻シャンティに出会う。手遅れになる前に帰って、と彼女は繰り返すが、彼はとどまる。自分を殺させようとしたのはアヌだとシャンティが言うと、彼はけりをつけてやると約束し、ふたりは体を重ねる。そして彼は口を滑らせる。彼女を殺そうとしたのは自分だった。アヌと、その父の財産を手に入れるために。彼はシャンティを殺し、事故現場へ逃げ戻る。人々が車から引き出していたのは、彼自身の遺体だった。傍らにシャンティが立ち、帰れと言ったのに、と告げる。もう出口はない。
タマンナー・バティアシャンティ役
何年も前に姿を消したヴィジャイの最初の妻。手遅れになる前に帰れと彼に告げ続ける。
カジョールデーヴヤニ・シン役
かつて娼館で働き、没落した旧王家に嫁いだ女性。暴力をふるう夫への復讐を企てる。
デーヴヤニ・シンの物語
スーラジは、宮殿での暮らしを約束してデーヴヤニを娼館から連れ出した。一族の威光で残っているのは、その宮殿だけだ。いま夫は酒に溺れ、毎晩のように彼女に手を上げ、屋敷で働く女性たちに性暴力をふるう。彼女は毎朝、傷を化粧で隠す。望みは息子のアンクルだけだ。イギリスへ留学させ、自分も後を追いたいと願うが、スーラジは許さない。そこで彼女は、かつての娼館からエイズウイルスに感染した若いレーカーを家政婦として迎え入れる。夫が手を出すとわかっていて。ある夜、レーカーの部屋から男と過ごす気配が聞こえ、デーヴヤニは微笑む。だがその直後、酔いつぶれて地面に倒れているスーラジを見つける。レーカーの部屋にいたのは、アンクルだった。
この作品が問いかけるもの
『慕情のアンソロジー2』は、女性の欲望を、本人に代わってそれを決めてきた仕組みの前に置く。親が整える縁談、雇い主と家政婦を隔てる線、家を支配する夫。幕開けは、結婚の前に互いを満たせるか確かめなさいと言い張る祖母だ。婚前の性が長くタブーとされてきた社会で、その異端を口にするのが、家族の誰にも黙らせることのできない年長者だという点が効いている。複数の批評家が推したコーンコナー・セーン・シャルマー監督の一編では、同じ家の両端にいるふたりの女性が秘密を分け合う。そこにあるのは性と同じくらい孤独だ。残る二編はより暗い。男の欲望は、かつて殺そうとした女のもとへ彼を連れ戻し、別の女性の体を使って企てた妻の復讐は、自分の息子に降りかかる。本作は2023年、配信作品を対象とするフィルムフェア賞で、批評家選出の作品賞を受けた。