私の奴隷になりなさい
Be My Slave
ストーリー
結末まで書いています。
人妻からの「今夜セックスしましょう」。壇蜜の映画デビュー作。
物語の語り手で、「僕」としか呼ばれない青年は、女性に不自由したことがない。大学時代からの恋人ミドリのほかにも、何人もの女性と関係を持っている。中途採用で出版社に入った彼は、先輩社員の香奈にひと目で心を奪われる。物静かで余裕のある人妻で、夫は大阪に出向しており、週末になると香奈が会いに通っている。それでも彼は口説き続けるが、相手にされず、しまいには叱られる。あきらめて数日後、仕事中に香奈からメールが届く。今夜、セックスしましょう。
その夜、香奈は、行為のあいだずっと自分の顔を撮影してほしいと頼む。それからは、香奈が呼びたいときにだけ呼ばれ、ろくに言葉も交わさず、終わればすぐに帰っていく。「僕」はミドリ以外の女性と別れ、いつ連絡が来てもいいように夜の予定を空けておくようになる。誕生日、香奈に家へ招かれた彼は、贈り物の映像ディスクを渡され、香奈は大阪へ出かけてしまう。そこに映っていたのは、先生と呼ぶ男に責められる香奈の姿で、なかには「僕」が撮った映像も混じっていた。
先生の正体は、香奈の行きつけのバーの常連の、冴えない中年男だった。不満を抱えた女性に、一週間であなたは美しくなると声をかける。同僚の愚痴をこぼしていた香奈もそうして誘われ、来る日も来る日も調教されて奴隷になったのだ。香奈と「僕」の出会いも、先生の筋書きだった。路線バスの車内で、先生はリモコンで香奈を人前で弄ぶ遊びを見せつけ、途中で降りると、そのリモコンを「僕」に託す。ミドリは去り、仕事も手につかなくなる。
やがて先生は、香奈の待つ部屋に「僕」を呼び出し、香奈を愛していると証明したければ、自分の目の前で彼女を抱けと命じる。「僕」にはできない。代わりに先生が、これが最後だと香奈を抱く。情が移ったからこそ解放するのだと言い、引き留める香奈を置いて出ていく。すると香奈の表情が冷たく変わる。まだ私のことが好きかと問われ、「僕」ははいと答える。では、私の奴隷になりなさい、と香奈は言う。
主な出演
壇蜜香奈役
出版社の先輩社員で人妻。先生と呼ぶ男のもとで、ひそかに奴隷として調教されている。
香奈の物語
香奈は、中途採用の青年に口説かれても相手にせず、しまいには叱りつける。彼があきらめた数日後、今夜セックスしましょうとメールを送る。行為のあいだ自分の顔を撮らせ、それからは呼びたいときにだけ呼び、終われば帰っていく。彼の誕生日には映像ディスクを渡して大阪へ出かける。そこには、先生と呼ぶ男に責められる彼女が映っていた。バーで会社の愚痴をこぼしていたとき、きれいになりたいかと先生に声をかけられ、奴隷になったのだ。青年と関係を持ったのも先生の命令だった。やがて青年の目の前で先生は最後に彼女を抱き、引き留める彼女を置いて出ていく。すると香奈の顔は冷たく変わる。まだ私が好きかと青年に問い、はいと答えられると、では私の奴隷になりなさいと告げる。
真山明大僕役
女性に不自由したことのない自信家の青年。香奈に心を奪われ、立場が逆転していく。
僕の物語
「僕」は、大学時代からの恋人ミドリのほかにも何人もの女性と関係を持っている。転職先で香奈に心を奪われ、叱られるまで口説き続けるが、数日後、今夜セックスしましょうとメールが届く。ミドリ以外の女性とは別れ、いつ呼ばれてもいいように夜を空けておく。誕生日に渡された映像には先生に責められる香奈の姿があり、自分との関係も先生の命令だったと知る。その夜、ミドリに見限られる。バスの中で先生からリモコンを託され、なぜ来たのかという宿題を出される。やがて呼び出された部屋で、香奈を愛しているなら目の前で抱けと先生に命じられるが、できない。先生が最後に香奈を抱いて去ると、まだ好きかと香奈に問われ、はいと答える。では私の奴隷になりなさい、と香奈は言う。
板尾創路先生役
バーの常連の冴えない中年男。香奈を調教し、青年をも自分の筋書きへ引き込む。
先生の物語
先生は、バーの常連の冴えない中年男で、不満を抱えた女性に、きれいになりたいかと声をかける。会社の愚痴をこぼしていた香奈もそうして誘い、来る日も来る日も調教して奴隷にした。香奈に命じて、職場に入ってきた青年と関係を持たせ、路線バスでは青年の前でリモコンを使って香奈を弄んだうえ、そのリモコンを青年に渡し、なぜ来たのかという宿題を残して降りていく。香奈のことを教えてほしいと頼みに来た青年には、彼女との出会いを語る。最後に香奈の待つ部屋へ青年を呼び、愛しているなら目の前で抱いてみせろと命じる。青年にはできない。先生は、情が移ったからこそ解放するのだと言って最後に香奈を抱き、引き留める彼女を置いて出ていく。
西条美咲ミドリ役
大学時代からの「僕」の恋人。香奈にのめり込む彼のもとを去る。
この作品が問いかけるもの
『私の奴隷になりなさい』は、ありふれた男の幻想、つまり落ち着いた年上の女性から今夜セックスしましょうとメールが届くという幻想を、裏返してみせる。女性に対していつも優位に立ってきた青年は、電話を待ち、夜の予定を空け、別の男と彼女の姿を見せつけられ、最後には自分を差し出す。サタミシュウの小説を映画にした本作は、緊縛や調教を見せ物としてよりも、力をめぐる学校のように描く。そこでは誰もが遅かれ早かれ、待つ側になるとはどういうことかを学ぶ。壇蜜にとって初めての演技の仕事であり、香奈の静けさが映画の核心を担っている。従っているように見える者こそが、実は決めているのかもしれない。残る問いは、官能的な表面より居心地が悪い。青年が愛と呼ぶものは、生まれて初めて主導権を失ったという経験以上のものなのか。