ベイビーガール
Babygirl
Moonlightの読みもの
Cinema『ベイビーガール』、身を委ねることは弱みを握られることではないこの一篇を読むストーリー
結末まで書いています。
結婚生活のすべてで演技をしてきたCEOがインターンに服従する。女性監督が“羞恥の喜劇”として撮った。
ロミー・マティスはニューヨークで自動化技術の会社を率い、舞台演出家の夫ジェイコブと長く連れ添っている。夫と体を重ねたあと、彼女は別の部屋へ抜け出し、ノートパソコンでポルノを見ながらひとりで達する。夫とのあいだで、そうなったことは一度もない。ある朝、出勤途中に放し飼いの犬に襲われかけた彼女を、ひとりの青年が救う。新しく入ったインターンのサミュエルで、彼は社の研修制度でロミーを指導役に選ぶ。
面談のたびに彼は彼女の権力をからかい、やがてそれを試しはじめる。立場を悪用しているのは自分のほうではないかと気にするロミーに、サミュエルは、電話一本であなたを辞めさせられるのは僕だと返す。安ホテルの一室で彼が支配する側に回ると、ロミーはすすり泣くほど激しく達する。関係は深まっていく。サミュエルは忘れ物のパソコンを届けに一家の別荘まで現れ、家族をすっかり魅了してしまう。二度と来ないでと命じるロミーに、彼は担当替えを願い出ると脅す。そうなれば理由を問われる。ロミーは夫に、あなたとは一度も達したことがないと打ち明け、そのうえでサミュエルに関係を続けてほしいとすがる。
次女の誕生日会に、サミュエルはロミーのアシスタントのエスメを連れて現れる。ふたりは付き合っていた。エスメは関係に気づいていると告げ、終わらせてほしいと頼む。あなたほどの地位に就ける女性は少ない、若い女性の手本でいてほしい、と。ロミーは夫に浮気を告白するが、見知らぬ男との一夜だったと偽り、傷ついた夫は彼女が何を求めているのかを聞こうとしない。別荘でサミュエルといる妻を見つけたジェイコブは、彼と殴り合いになる。女性のマゾヒズムなど神経症だと言う夫に、サミュエルは古い考えだと返す。発作を起こしたジェイコブを、サミュエルは落ち着くまで抱きとめ、去っていく。
サミュエルは日本での仕事に移る。長女イザベルに背中を押され、ロミーは夫のもとへ帰る。関係を知っているとほのめかし、自宅に誘ってきた役員には、あなたなど怖くないと言い放って部屋から追い出す。家で、ロミーとジェイコブは彼女が望むとわかったやり方で愛し合い、彼女は夫との行為で初めて達する。頭に浮かんでいるのはサミュエルの姿だ。
主な出演
ニコール・キッドマンロミー・マティス役
ニューヨークの自動化技術企業の経営者。長い結婚生活で満たされず、インターンと関係を持つ。
ロミー・マティスの物語
ロミーは夫ジェイコブとの行為のあと、別の部屋でひとりポルノを見て達する。夫とのあいだでそうなったことは一度もない。インターンのサミュエルに権威を試されると、彼とキスをし、安ホテルの一室で彼に支配されて、すすり泣くほど激しく達する。別荘に現れた彼を追い返し、夫にはあなたとは一度も達したことがないと打ち明け、それでもサミュエルに続けてほしいとすがる。アシスタントのエスメに終わらせてと頼まれ、夫に浮気を告白するが、見知らぬ男との一夜だったと偽る。男たちが殴り合い、サミュエルが日本へ去ったあと、長女イザベルに促されて家に戻る。関係をほのめかす役員を、怖くないと言って追い出す。そしてサミュエルを思い浮かべながら、夫との行為で初めて達する。
ハリス・ディキンソンサミュエル役
ロミーの会社のインターン。彼女を指導役に選び、支配と服従の関係へと引きこんでいく。
サミュエルの物語
サミュエルは、通りで放し飼いの犬に襲われかけたロミーを救った青年として現れる。面談のたびに権力について彼女をからかい、立場を悪用しているのではと気にする彼女に、電話一本であなたを辞めさせられるのは僕だと返す。ホテルの一室で支配する側に回ると、さらに踏みこむ。一家の別荘に現れて家族を魅了し、二度と来ないでと言われると、担当替えを願い出ると脅す。すがるロミーが服従を認めると関係を続け、付き合っているアシスタントのエスメを次女の誕生日会に連れてくる。別荘でジェイコブと殴り合ったあと、女性のマゾヒズムは神経症だと言う彼に古い考えだと返し、発作を起こした彼を抱きとめて落ち着かせ、去っていく。やがて日本での仕事に移る。
アントニオ・バンデラスジェイコブ・マティス役
ロミーの夫で舞台演出家。妻を愛しているが、彼女が何を求めているのかを知らずにきた。
ジェイコブ・マティスの物語
ジェイコブは長年ロミーと体を重ねてきたが、妻が自分とのあいだで一度も達したことがないとは知らずにいた。本人にそう告げられ、さらに浮気を打ち明けられる。見知らぬ男との一夜だったという話に傷ついた彼は、妻が何を求めているのかを聞こうとせず、彼女は別荘へ移る。あとを追った彼は、妻とサミュエルが一緒にいるのを見つけて殴り合いになる。女性のマゾヒズムなど神経症だと言い、古い考えだと返されると発作を起こし、落ち着くまで彼を抱きとめるのはサミュエルだ。娘に背中を押されて戻ってきたロミーは、劇場を訪ね、望みを伝えてこなかったことを詫びる。しばらくのち、家で彼は妻が望むやり方で彼女を抱き、彼女は初めて夫との行為で達する。
ソフィー・ワイルドエスメ・スミス役
ロミーの野心的なアシスタント。サミュエルと付き合い、上司との関係に気づく。
この作品が問いかけるもの
『ベイビーガール』は、結婚生活のあいだずっと感じてもいない快楽を演じてきた女性の物語であり、それを口にするのにどれほどの代償がいるのかを描く映画だ。服従したいというロミーの欲望は、社内でいちばん力を持つ人間としての暮らしと、うまく噛み合わない。映画はこの関係を無害なものとして描かない。彼女は経営者で、彼はインターンだ。力の差はどちらの方向にも働き、どの場面も、誰が誰を破滅させられるのかをめぐって動いている。脚本と監督を手がけたハリナ・ラインは恥を物語の中心に置き、罰ではなく、ロミーが夫に自分の望みを伝える場面で映画を終える。ニコール・キッドマンはこの役でヴェネツィア国際映画祭の女優賞を受けた。残る問いは、性よりも正直さについてのものだ。ひとりがようやく本当の望みを口にしたとき、長い結婚は何に耐えられるのか。